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腎移植マニュアル 3. CKD(慢性腎臓病)

「腎臓」は、体内の老廃物や余分な水分、塩分などを、尿として排泄する働きをしていますが、その「腎臓」の働きが悪くなることを「腎不全」といいます。また、「腎不全」のうち、ゆっくりと長い時間をかけて腎臓の働きが悪くなるものを「慢性腎不全」といいます。

 

「慢性腎不全」は、最近「CKD」と呼ばれることが多くなりました。「CKD」は、「Chronic Kidney Disease;慢性腎臓病」の頭文字をとったものです。「CKD」と「慢性腎不全」の違いは何かと言われると、はっきりした定義はないのですが、ごく初期段階の腎機能障害を含めるのが「CKD」で、「採血検査」などでわかる程度の腎臓機能障害が出現した状態を「慢性腎不全」というニュアンスがあります。

 

日本人の平均寿命は延びつづけており、「人生100年時代」と言われておりますが、その一方でCKDも増えており、日本国内の患者数は1300万人以上、つまり成人の8人に1人がCKDであるとされ、新たな国民病と言われています。

 

「CKD」自体が病気の名前ではあるのですが、「CKD」にはその元となる病気というものが存在します。「腎炎」などの「腎臓」自体に生じる病気などがそれにあたりますが、むしろ「CKD」の元となる病気のなかで「腎炎」の割合は少ないほうです。ではどのような病気が元となり「CKD」になってしまうのでしょうか。それは、「糖尿病」、「高血圧」、「脂質異常症」、「高尿酸血症」などのさまざまな「生活習慣病」であったり、「心不全」などの心臓の病気です。これらの病気により、「腎臓」の中に無数にある細かい動脈や毛細血管がダメージを受けることで、少しずつ「腎臓」の機能が落ちていくのです。

 

また「生活習慣病」のように病気ではなくても、「喫煙」や「肥満」、「過度の飲酒」や「ストレス」などの「生活習慣」そのものが「CKD」の原因となることもあります。特に「喫煙」は、ほかのさまざまな病気の原因となることがわかっていますが、腎臓の働きについては悪影響があることが明らかにわかっているため、腎臓のことが心配なのであれば絶対にやめるべきと考えます。

 

「CKD」は、ごく初期の段階では自覚症状が全くありません。徐々に進行すると、腎臓がうまく尿の量を調整できなくなるために、むしろ最初は夜間の尿量が増え、その結果、夜中に眠ってから尿で目が覚めることが増えたりします。このように夜間の尿回数が増えることを「夜間頻尿」と言います。
 

ただし「夜間頻尿」があるからといって必ずしも「CKD」の初期症状というわけではなく、「過活動膀胱」などの「膀胱」の異常でも「夜間頻尿」になることはよくあります。「CKD」で「夜間頻尿」が起こる場合は、1回ごとの排尿でしっかりと尿がたくさん出る傾向があります。逆に「過活動膀胱」では、尿意を感じて目が覚めて排尿するのに、なかなか尿が出ない、少ししか尿か出ない、という傾向があります。

 

「CKD」がさらに進行すると、「貧血」による立ちくらみや動悸を感じたり、体に水分や老廃物が溜まりすぎることにより手足のむくみや息切れや吐き気、高血圧による頭痛などが出てきます。このような症状が出る頃には、「CKD」がかなり進行してきている可能性が高いと言えますが、もちろんどれも「CKD」以外でも生じる可能性がある症状です。

 

このように「CKD」の段階ごとに出やすい症状はあるものの、「これがあればCKDだ」と断定できるものはありません。そこで「CKD」かどうか、どの程度の段階であるか、を調べるために「尿検査」と「血液検査」で判断します。「尿検査」では「尿蛋白」の有無をチェックし、「血液検査」では「腎臓」の働きの目安となる「クレアチニン」(Crと表記されることが多いです)という検査項目の値をチェックします。

 

「尿検査」で調べる「尿蛋白」は、試験紙の色の変化で-、±、+、++、+++、++++などと判定されます。また、もう少し詳しい検査として「尿蛋白」を数値として計測したり、「尿蛋白」のなかでも「尿中微量アルブミン」を計測したりする検査もあります。特に、ごく早期の「CKD」では、尿蛋白が「±」あるいは「-」と判断されるような場合でも、「尿中微量アルブミン」を測定すると、すでに「CKD」と診断される状態である場合もあります。

 

「血液検査」で調べる「クレアチニン」は高ければ高いほど腎臓の働きが悪いということを意味します。性別によって微妙に正常値が違いますが、おおよその目安として、1.0以上の場合は腎臓の働きが少し悪い可能性があります。ただし「クレアチニン」は、年齢や性別(正確には体内の筋肉の量)にも影響を受ける数値です。

 

そこで、体内の筋肉の量の違いによる影響を受けないような「腎臓」の機能の目安として、「eGFR」(イー・ジー エフ アールと読みます)が用いられます。「eGFR」は、「クレアチニン」の数値と年齢と性別から計算して導き出されます。腎臓の働きが正常の場合、eGFRの値は90以上です。ただし、eGFRが正常値であっても、「尿検査」で「尿蛋白」が陽性の場合は、3ヶ月後に再検をしてやはり陽性なら、すでにごく初期のCKDと判断されます。CKDのステージ1・2の方は  万人、いっぽうで腎臓の働きがすでに悪くなりかけていると言えるステージ3以上の方は 万人いると言われています。

 

「CKD」の怖いところは、ステージ1・2ではほとんど症状がないわりに、生活習慣の改善をするなどの手をうたなかった場合、比較的高い確率でステージ3へすすみ、そしてステージ3まで進むと多くの方が歳をとるごとにさらに進行してしまうことです。この段階では進行食い止める策はあるのですが、いよいよステージ4くらいまで来ると進行を止めることはできなうなり、薬などでなるべく進行を遅らせるしかなくなります。

 

そしてステージ5まで進行すると数ヶ月〜数年以内には、いわゆる「末期腎不全」と言われる状態となり、「貧血」による立ちくらみや動悸を感じたり、体に水分や老廃物が溜まりすぎることにより手足のむくみや息切れや吐き気、高血圧による頭痛などの症状がひどくなり、「尿毒症」と言われる状態に陥ります。こうなると、もはや「血液透析」、「腹膜透析」、「腎移植」などの「腎代替療法」(腎臓の代わりをする治療」という意味)を行わざるを得なくなります。

 

最初に触れたように「CKD」の原因はさまざまです。原因によっては、早期のうちから最善の対策と治療を行っても、「末期腎不全」に至ってしまう場合もあり、それは仕方のないことです。そのいっぽうで、多くの方は「生活習慣病」や悪い生活習慣自体がどのように自分の体を障害するかはっきり知らずに、漠然とよくないものなのかと思いながら日々の暮らしていき、「CKD」が後戻りできない状態まで進行してしまいます。

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