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尿が泡立つ

「尿が泡立つ、蛋白がおりてないか」と心配して泌尿器科を受診する方がいます。確かに、「慢性腎臓病」などによる尿蛋白のせいで尿が泡立つことがあります。しかし尿が泡立つ原因は他にもあります。他にも「膀胱炎」などの尿路感染で尿が泡立つこともあります。泌尿器科や腎臓内科を受診しましょう。

目次

 

尿が泡立つ仕組み

最近では洋式トイレが普及し、男性でも座って排尿することが増えていると言われています。そうなると、排尿した後に自分の尿をマジマジと見ることも減っているのかと思います。ただ、特に男性の場合は公衆トイレなどでは小便器が置いてあるところがほどとんどなので、尿の泡立ちに気づく方もいるようです。

「泡」といえば石鹸ですが、なぜ石鹸は泡が立つのでしょうか。これには石鹸の「界面活性作用」が関係しています。石鹸の入っていない水でも、ペットボトルなどに入れて振ると泡が出ますが、すぐに弾けて消えます。これは、水の「表面張力」が原因で、「泡の壁」である薄く伸びた水の膜が、丸く小さくなろうとするからです。

 

石鹸を入れた水はどうでしょう。石鹸には「界面活性作用」があり、このために水の表面張力が減ります。水の表面張力が減ると、薄く伸びた泡の壁が伸びたままになりやすく、泡が潰れにくくなる、というわけです。尿が泡立つというのは、尿の中に石鹸と同じような「界面活性作用」を有する物質が多くなっているということになります。

 

尿が泡立つ原因

尿が泡立つ原因として、特に有名なものとして「尿蛋白」があります。「蛋白」は「界面活性作用」有するため、尿中の濃度が高くなると泡立つのです。「尿蛋白」は腎炎やネフローゼ、糖尿病性腎症などの慢性腎臓病になると出ます。

その他に尿が泡立つ原因としては、「脱水などで尿が濃い」ことなどもあります。また、「膀胱炎」などの尿路感染症で尿が濁っている場合、肝臓が悪く「黄疸」がある時に出る「ビリルビン尿」、「大腸憩室炎」や「子宮癌」の放射線治療後などに生じる「膀胱腸瘻」などの場合も、腸管内のガスやビリルビンが尿に混ざることで泡立ちが強くなります。

 

特に心配のない尿の泡立ち

尿が泡立つ、と心配されて受診された方のうち、実は一番多い原因が、単に「脱水で尿が濃い」ことだったりします。これは特に病気ではなく、正常な状態です。
腎臓はとても優秀な濾過装置です。体内の水分量を敏感に察知し、これが多すぎる場合は尿の量を多くし、少ないときは尿の量を減らします。仮に脱水傾向の場合は、体内の水分量を保持するために尿量が減ります。すると、尿中の「ウロビリノーゲン」という物質の濃度が濃くなります。「ウロビリノーゲン」は肝臓で作られた「胆汁」が、一部代謝されて尿に出てきたものです。この「ウロビリノーゲン」が「界面活性作用」を有するので脱水状態では尿が泡立ちます。

夜間眠っている間は水を飲まないので朝一は脱水傾向のことが多く尿が泡立つのです。また、ウロビリノーゲンは酸化するとウロビリンという物質に変化しますが、ウロビリンは黄色い色をしているので、朝一の尿の色は泡立つだけでなく色も濃くなります。

尿の色が濃いについてはこちら

 

病的な尿の泡立ち

1.蛋白尿(腎炎、ネフローゼなど)

「腎臓」は、血液を濾過して尿を作ることで、体に溜まった老廃物や余分な水分などを体外へ排出します。この働きを主に担当するのは、「腎臓」のなかに100万個あると言われる、「糸球体」という非常に小さなフィルター装置です。

血液中の「蛋白」は、体にとって必要なものです。通常は「糸球体」のフィルターを通過しないため、尿の中に出る「蛋白」はごく少量です。しかし、腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、高血圧性腎症(腎硬化症)などの病気があると、『糸球体」のフィルターの網目が壊れ、尿の中に蛋白が漏れて出てくるのです。これが、「蛋白尿」(たんぱくにょう)です。

「蛋白」も「界面活性作用」があるので、尿中の濃度が高くなると尿が泡立つ原因になります。

蛋白尿についてはこちら

 

2.糖尿病

「尿糖が陽性」というのは、尿中の「ブドウ糖」の濃度が高いということを意味します。「ブドウ糖」自体にはあまり界面活性作用はないと言われています。ただ、例えば尿糖が(++++)の場合、「ブドウ糖」の濃度は1000mg/dLつまり1Lに大さじ1杯のブドウ糖が入っている計算となります。かなり濃い「ブドウ糖」なので、泡立ちそうなイメージはあるのですが、これ自体で尿が泡立つのかどうか、私はあまりはっきり知りません。

ただし、一つだけ確かなことがあります。「尿糖が陽性」ということは「糖尿病」の可能性があります。「糖尿病」の罹患歴が長いと「糖尿病性腎症」を発症し「蛋白尿」が出ることがあるため、その際には尿は泡立つはずです。

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3. 尿路感染症

「膀胱炎」や「急性腎盂腎炎」などの病気は、尿の通り道である「腎盂」や「膀胱」の粘膜に細菌が感染することで起こります。すると尿中に「白血球」が入り「膿尿」となるため尿が濁ります。細菌が入ることで尿中の「尿素窒素」を分解して「アンモニア」を作るため、尿の臭いが強くなったり、尿がアルカリ性に傾いたりします。また、細菌に感染した粘膜からは「蛋白」が滲み出るので、この影響で尿が泡立つことがあります。

尿の濁りについてはこちら

尿のにおいについてはこちら

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4. 黄疸(おうだん)

「黄疸」(おうだん)を知っていますか?肝臓が悪くなると白目や手など、身体中が黄色っぽい色になる状態です。「黄疸」は、主に肝臓の病気や溶血性貧血などによって起こりますが、これは肝臓が作る胆汁の成分のうち、茶褐色〜緑色をした「ビリルビン」という蛋白質の色です。

肝臓が悪くて黄疸になると、「ビリルビン」が尿に混ざって出るようになるため、尿の色がオレンジ〜茶褐色のような色になります。この「ビリルビン」も「界面活性作用」が強く尿が泡立つ原因になります。

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5. 膀胱腸瘻

大腸の一部に「憩室」という小部屋のようなものができる、「大腸憩室」という病気があります。「大腸憩室」に炎症が起こると「大腸憩室炎」といって、虫垂炎(俗にいう盲腸)のように腹痛などの症状が出ます。「大腸憩室炎」が重症になったり慢性化したりすると、時に隣り合った「膀胱」の壁に炎症が及びます。すると、膀胱と大腸の間に穴が空いて、お互いが通じています。これを「膀胱腸瘻」といいます。子宮がん治療などで骨盤に放射線(昔は”コバルト”と呼んでいました)を当てた場合なども、数年してからその合併症として「膀胱腸瘻」を形成することがあります。

「膀胱腸瘻」になると、腸の内容物が膀胱に入るため、尿に便が混ざることになります。便には「ビリルビン」や「ウロビリノーゲン」が含まれますので尿が泡立ちます。また腸管のガスが尿に混じるため、出した尿が泡立つというよりも、泡が入った尿が出る、という感じになります。

 

泌尿器科専門医 石村武志

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