骨盤底筋体操
咳やくしゃみ、重いものを持ち上げた際に尿が漏れてしまうことを、腹圧性尿失禁と言います。「骨盤底筋体操」は、加齢や出産で力が弱まってしまった「骨盤底筋群」や「尿道括約筋」を鍛えて、尿を我慢する力を復活させるための体操です。毎日根気よく、3ヶ月続けると多くの方で腹圧性尿失禁が改善します。
腹圧性尿失禁について
咳やくしゃみ、重いものを持ち上げたり階段の昇り降りなど、おなかに力が入った時に尿が漏れてしまうことを、「腹圧性尿失禁」(ふくあつせい にょうしっきん)と言います。
「腹圧性尿失禁」は、尿をためておく「膀胱」の出口にある、「尿道括約筋」という尿を止めるバルブのような筋肉の締まりが弱くなることで起こります。つまり、お腹に力が加わって膀胱が押された時に、バルブを締める力が圧力に負けて尿が押し出されてしまうわけです。「尿道括約筋」は、骨盤の底にあって「膀胱」や「子宮」などを支えている「骨盤底筋群」という筋肉と連動しています。
過去の出産経験や閉経などで「骨盤底筋群」はダメージを受けたり、力が弱くなったりします。したがって、お子さんを何人も出産した女性やご高齢の女性は、「腹圧性尿失禁」が生じやすくなります。また喘息持ちの方など、普段から咳をよくする方や、便秘がちでよくきばる方、重い荷物を持つことの多い方、肥満体型の方なども、腹圧がかかりやすく「腹圧性尿失禁」になりやすいといわれています。
「腹圧性尿失禁」の最も効果的な治療は、ずばり「ダイエット」体重を減らすことです。「腹圧性尿失禁」で悩んでいる方で、「ダイエットなど容易い」という場合は、ぜひダイエットに励んでもらうのが一番の近道です。
しかし古今東西、女性にとってダイエットほど、ありふれていながら難しい課題はありません。そこで何かほかの方法で「腹圧性尿失禁」を改善できないでしょうか。もちろん「括約筋」を締める飲み薬、「尿道括約筋」を強制的に鍛える「干渉低周波治療」などありますが、最も自然でダイエットの次に効果がある方法をご紹介します。それが「骨盤底筋体操」です。
骨盤底筋体操とは
「骨盤底筋体操」は、加齢や出産で力が弱まってしまった「骨盤底筋群」や「尿道括約筋」を鍛えて、尿を我慢する力を復活させるための体操です。上で述べたように、咳やくしゃみ、重いものを持ち上げたり階段の昇り降りなど、おなかに力が入った時に尿が漏れる「腹圧性尿失禁」に対して効果があります。
また、「水を触ったときなど、急に強い尿意をもよおして、トイレに駆け込むが間に合わずに漏れてしまう」といった症状の「切迫性尿失禁」、「過活動膀胱」という病気があります。これらの病気も、「骨盤底筋群」や「尿道括約筋」が弱まり、わずかな尿が尿道にしみ出ることが刺激となって尿意をもよおす原因となるとも言われています。よって、「骨盤底筋体操」で、「切迫性尿失禁」、「過活動膀胱」も改善することがあります。
さて、前置きが長くなりましたが実際の「骨盤底筋体操」の方法をご説明します。おしっこを出している途中に、おならを我慢する要領で、肛門と膣をギュッと締めてみてください。出ている途中でもある程度おしっこが止められると思います。この動きをできるだけお腹に力は入れず、肛門だけの力で行うようにするのが「骨盤底筋体操」です。この感覚をまずは頭に入れた上で、以下をお読みください。
骨盤底筋体操の基本形
仰向けに寝て、息を吸いながら肛門・膣を5秒間「ギューッ」と締めます。そのあと息を吐き出して力を抜きながら5秒間休みます。この10秒間の運動を合計5回繰り返します。ここまでで合計50秒かかることになりますが、これが「骨盤底筋体操」1セットです。十分な効果を得るためには、これを1日5セット行うのが良いと言われています。たぶん5セット終わった頃には筋肉が疲れて、締める感覚がわからないような感じになると思います。ですので続けて2セット以上行うのはあまりこうかがないかもしれません。逆に1セット終わってもまだ余裕があるような場合は、肛門・膣を「ギューッ」と締める時間を1回10秒に増やすのがよいでしょう。
骨盤底筋体操の応用形
1日5セット、仰向けで体操を行うのはなかなか十分に時間が取れないと思います。そこで、仰向けの方法ができるように慣れば、 椅子に座った姿勢、 机に手をついた姿勢などでも、同じように肛門・膣を5秒間「ギューッ」と締めることができるように練習しましょう。そうすれば、外出先、仕事中、電車に乗っている時、などを利用して、決まった日常生活のサイクルのなかに取り入れることができると思います。
骨盤底筋体操の問題点
尿失禁でお悩みの女性は本当にたくさんいらっしゃいます。かなり生活に制限を受ける厄介な悩みなのですが、「骨盤底筋体操」をしっかり行えば相当な効果があります。お金もかからず痛みもない、こんな良い治療がですが、残念ながら唯一の欠点は、ずばり「なかなか続けられない」ということです。3ヶ月毎日続けて行えば70%くらいの方が効果を実感できると言われています。一度根気良く続けてみてはいかがでしょうか。
もちろん、「やっぱり続けるのが難しかった」という場合でも、あきらめず相談してください。「干渉低周波治療」など他の方法をご提案します。