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高血圧

日本全国で高血圧の方は、約4000万人以上とされています。日本人の3人に1人が高血圧、40歳以上に限っていうと2人に1人は高血圧です。世の中で最もありふれた病気かもしれません。こんなことを聞くと「歳をとったら多少血圧くらいあがるものだ、たいしたことない、、」という気持ちにもなってしまうかもしれません。確かに、老化現象のひとつといえばそれでおしまいです。一方で、高血圧は、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病、認知症など、ありとあらゆる病気の原因になるのも事実です。高血圧をしっかり治療することで、健康寿命を延ばせることははっきりとわかっています。また、比較的若い方が特殊なタイプの高血圧になることもあり、この場合はさらに治療の意義は大きくなります。

 

目次
  • 高血圧の予防、注意点

 

血圧とは

「心臓」から血液を運ぶ血管を「動脈」というのはみなさん知っていると思います。例えるなら、液体である血液を、全身に送るためのポンプが心臓で、ホースが「動脈」です。このホースのなかを血液が流れるときに、ホースの壁にかかる圧力のことを「血圧」といいます。

血圧は、ポンプである心臓が収縮して血液を送り出す時にいちばん高くなります。この時の血圧を「収縮期血圧」(いわゆる上の血圧)と呼んでいます。次に、心臓が血液を送り出してまた伸びてふくらむ時にいちばん低くなります。これが「拡張期血圧」(いわゆる下の血圧)です。

 

高血圧の原因

ホースの壁にかかる圧である血圧は、ポンプが血液を送り出す力や、ホースの中に入っている血液の量、ホースの硬さや太さなどによってあがります。

慢性的なストレスなどで自律神経が緊張し続けたり、心臓のポンプの働きを強めるホルモンが出続けると、血圧はあがります。また塩分を摂りすぎると、その塩分は水分を溜め込み、血管のなかの血液の量が増え血圧は上がります。もちろん加齢によって血管の弾力性が落ちても血圧は上がります。

「脂質異常症」や「糖尿病」などは、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化により血管は硬くなり、内腔は細くなり、血圧はあがります。

脂質異常症はこちら

糖尿病はこちら

これ以外にも、肥満、加齢、気候、運動不足、遺伝的な体質などが血圧が上がる原因となります。このように、血圧を上げる要素というのは、1つではなく、複数の原因が重なっていることがほとんどです。このように原因がひとつに特定できない一般的な高血圧を「本態性高血圧」といいます。

本態性高血圧の原因
    1. 加齢
    2. ストレス
    3. 肥満
    4. 運動不足
    5. 睡眠不足
    6. 喫煙
    7. 塩分の摂りすぎ
    8. 気候
    9. 遺伝的な体質
    10. 糖尿病
    11. 脂質異常症

 

高血圧の90%は、「本態性高血圧」と言われています。しかし比較的若い方が重症の高血圧の場合、血圧が上がるような元の病気が潜んでおり、そのせいで血圧が上がっていることがあります。このように高血圧になる元の病気がある場合を「二次性高血圧」といいます。「二次性高血圧」のなかでも「原発性アルドステロン症」はもっとも多い病気です。

高血圧の方の10〜20人に1人は「原発性アルドステロン症」の可能性があると言われます。「副腎」という臓器で作られている血圧を上げる「アルドステロン」というホルモンが過剰に分泌されることが原因で、手術によって治ることがあります。「原発性アルドステロン症」に対する手術「腹腔鏡下副腎摘除術」は泌尿器科で行う手術です。

「二次性高血圧」には、「褐色細胞腫」や「クッシング症候群」なども「副腎」にできる腫瘍です。それぞれ「カテコラミン」や「コルチゾル」というホルモンにより血圧が上がりますが、やはり泌尿器科で手術をする病気です。

副腎以外にも腎臓が原因で起こる「二次性高血圧」として、「腎実質性高血圧」や「腎血管性高血圧」などがあります。このように泌尿器科と高血圧は切っても切れない関係にあるのです。

 

高血圧が引き起こす病気

硬く細い血管に血液を送り出さないといけない心臓には、負担がかかり心不全などを引き起こします。また、心臓の筋肉自体に血液を送っている血管が硬く細くなると、心筋梗塞を引き起こします。

動脈硬化があると血圧が上がると言いましたが、血圧が高いとそのような動脈硬化を起こした血管はさらにダメージを受けます。ダメージを受けた部分に血圧の力が加わると、血管は破れてしまいます。脳の血管の場合は脳出血となります。

動脈硬化は腎臓にも悪影響をおよぼします。腎臓は、血液から余分な水分や老廃物を尿として取り除くフィルターです。腎臓は無数の毛細血管と、血液を濾過する装置である「糸球体」、糸球体で濾過された「尿のもと」から必要なものを再度回収する「尿細管」からなります。

つまり、腎臓は細かい血管の塊なのです。動脈硬化が起こり血液の流れが悪くなると、フィルターである糸球体まで血液がしっかり届かなくなり腎臓の働きは低下し「腎不全」に陥ります。

また高齢化社会により問題となっている「認知症」も高血圧によって引き起こされると言われている病気のひとつです。

 

高血圧の基準

では、血圧がどのくらい高いと「高血圧」と言われるのでしょう。診察室で血圧を測って、120/80mmHg未満が正常、140/90mmHg以上の場合は高血圧とされています。ただし、血圧は自律神経やホルモンによって調整されているため、高血圧でなくても運動や精神的緊張、ストレスで上がったり下がったりします。血圧がいつも高い状態このことを高血圧というので。一度血圧を測って高くても、もういちど測ってみて下がっていれば必ずしも高血圧とは言えません。

 

高血圧の基準(簡単に)

診察室血圧 140/90以上

家庭血圧  135/85以上

 

血圧の診断基準(詳しく)

 

また、同じ人でも病院で測る血圧と、自宅で測る血圧では、5mmHg病院での血圧が高くなると言われています。ですので、自宅で測定した「家庭血圧」では1150/75mmHg未満が正常、135/85mmHg以上の場合は高血圧となるのです。

 

正しい血圧の測り方

血圧は測る時間や場所、条件で大きく変わります。例えば運動をすると、筋肉に酸素が必要となるため血液をたくさん送る必要が出てきます。すると、自律神経が緊張して血管をしめあげるほか、アドレナリンなどのホルモンが分泌されて心臓のポンプ機能が強くなります。

そして運動をやめると再び自律神経の緊張が解けてホルモンの分泌も減ります。このように、血圧が必要に応じて上がったり下がったりするのはむしろ正常な反応で、人間が生きていくためには必要な作用と言えます。ところが、高血圧のの場合、自律神経の緊張が取れないまま、あるいはホルモンが出続けたまま、もしくは動脈硬化が進んで血管が硬くなっているなどで、高い血圧が下がらなくなっているのです。

そこで、本当に問題となるような高血圧を調べるには、毎日決まった時間の測定が重要です。基本的には朝と夕の1日2回、座った状態で血圧測定をしましょう。具体的には、朝の血圧は、起きて1時間以内にトイレを済ませ、朝ごはんや朝のくすりを飲む前に測定します。夕の血圧は、寝る前でお風呂に入って1時間以上経ってから測定しましょう。

血圧を測る際の腕の高さによって、誤差が出ます。心臓より高い位置だと、重力で血液が届きにくいため実際より低くなります。逆に腕を心臓より低い位置におろしておくと、重力で血管内の血液が下の方にとどまるため、実際より高い値になります。

血圧計には上腕にで測定するものと、手首で測定するもの、2種類あります。どちらも正しく測定できていればよいのですが、手首のタイプはどうしても腕が下がって心臓より低くなり、実際の血圧より高くなりがちです。できれば上腕に巻くタイプのものを使うか、手首のタイプを使うならしっかりと心臓の高さで測りましょう。

また、性格にもよりますが、「さあ血圧をはかろう」と思うと誰もみていなくても少しプレッシャーがかかるのでしょう。何度も血圧を測ると最最初が一番高く、2回目、3回目と下がることも多いです。一般的には平均値を記録となっていますが、1回目はプレッシャーがかかって高かったということで最後に測定した一番低いものを採用して血圧手帳に記録しても良いと思います。

 

高血圧の症状

140/80mmHg程度の高血圧では自覚症状ほとんどありません。さすがに、急に血圧があがり200/120mmHgくらいになると頭が痛い、フラフラ、ドキドキするなどと訴える方が出てきます。ただし、通常は高血圧は症状がない、と認識しておいてください。それでも高血圧は寿命を縮めます。つまり、「症状がないからといって、治療しなくてよいというわけでは決してない」ということになります。

 

高血圧の検査

うえで説明した通り、1回測った血圧だけで「高血圧」とはなりません。まずは、血圧計を購入して自宅で朝、夕の血圧測定を習慣化させるところがスタートかと思います。もしそんなことは面倒くさくてやってられない、という方がいれば、受診の際に測る血圧でも測らないよりは全然いいです。まずは、本当に「高血圧」なのか、どの程度血圧が高いのかを調べることが重要です。
そして、もしも血圧が本当に高かった場合は、それによる障害が色々な臓器に出ていないかをチェックします。採血検査や尿検査で腎臓の働きを調べたり、心電図や胸部レントゲン、超音波検査で心臓の働きを調べたりします。また場合によって、「脈派測定」や「ABI」、「頸動脈エコー」などで、動脈硬化の程度を評価します。

また若い方で異常に血圧が高い方や、採血検査で疑わしい所見がある場合は、先ほどの「原発性アルドステロン症」を含め、特殊なタイプの高血圧でないかどうかを調べます。

 

高血圧の治療

薬を飲まなくても以下のような健康的な生活を送ることで高血圧は改善します。食事・運動療法といいます。

1)食塩制限
2)野菜・果物の摂取
3)適正体重の維持
4)運動療法
5)節酒
6)禁煙

逆に言えば、もともとこのような生活を送っていれば、高血圧になることは少ないわけです。いくら万病のもとといわれても、寿命が縮まるとわかっていても、現時点では無症状の病気のために、食事・運動療法を徹底するのは非常に難しいと思います。

そこで降圧剤を内服することになります。もちろん薬に頼らず生活習慣の改善だけで血圧が下がるのが最善です。ただ、人はそれぞれ色々は背景を持ち、また今まで築きあげてきた人間関係があります。もちろん、自分自身で一念発起し生活習慣を一変させるのは理想ではあります。現実はなかなかそうもいかないでしょう。
降圧薬治療は、一つの薬剤で少量ずつ開始し、血圧の値や副作用に注意しながら徐々に増やしていきますが、中等度以上の高血圧の場合は、最初から2種類の降圧薬を併用したり、多めの量を用いたりする場合もあります。

薬の力を借りてでも、結果的に血圧が下がるのであれば、高いままでいるよりは、絶対に長生きできるのです。一度薬を飲み始めたら、一生やめられないと思っている方もいるかもしれません。できるような環境になってから、食事・運動療法の継続により症状が改善してくれば、薬の量を減らしたり、やめたりすることも可能です。一度降圧薬を服用し始めたら飲み続けなくてはいけないと考えるのではなく、薬がやめられるように日頃から生活習慣の改善を心がけ、それを継続することが大切なのです。

高血圧の治療目標は、正常値である「140/90 mmHg未満」です。ただし慢性腎臓病や糖尿病の方の場合、動脈硬化のリスクが重なることを考えると目標はさらにきびしく「130/80mmHg未満」となります。
ただし、75歳以上の方では、血圧が下がりすぎることによる腎機能低下や脳卒中のリスクもあると言われており、「140/90 mmHg未満」が目標値となります。

 

高血圧の予防、注意点

高血圧の方は、脂質異常症、肥満、糖尿病、慢性腎臓病など、ほかの動脈硬化のリスクとなりうる病気も併せ持つ確率が高いです。これらの病気についても必要に応じて、食事・運動療法を取り入れて、足りない部分や薬で治療することが重要です。

 

泌尿器科専門医 石村武志

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