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高尿酸血症(痛風)

血液中の「尿酸」が多くなりすぎた状態が「高尿酸血症」です。「ぜいたく病」と言われるのも無理はなく、確かに美味しいものを食べているとなりやすい病気です。「高尿酸血症」が続くと、主に足の親指の関節に「尿酸塩」の結晶が溜まり炎症を起こすため「痛風発作」が起こります。

 

高尿酸血症・痛風とは

尿酸とは

 

人間の体のなかには、細胞の地図である「遺伝子」を構成する「DNA」や、エネルギーを運ぶ役割を担当する「ATP」という物質があります。「DNA」や「ATP」は、総称して「プリン体」と呼ばれます。これらの「プリン体」は体のなかで不要になると、「尿酸」になります。そして、「尿酸」は主に「腎臓」から体外に排泄されます。

毎日、およそ0.5gの尿酸が体内で作られるほか、食物として0.1g程度摂取されます。そのうち80%程度が腎臓から排泄され、残りは便などに排泄されています。

「尿酸」が何らかの原因で、腎臓から排泄されにくくなったり、たくさん作られすぎたりすると、血液中の尿酸が増えていきます。血液中の「尿酸」が多くなりすぎた状態が「高尿酸血症」です。具体的な原因としては、過食や美食、肥満、多量のアルコール摂取、過度の運動や筋肉疲労、脱水、継続的なストレス、遺伝的要因等などがあります。

 

痛風とは

血液中の尿酸値が「7.0㎎/dl」を超えると「高尿酸血症」と呼ばれるようになります。尿酸値が高いだけでは特に症状はありません。しかし、尿酸値が高い状態が続くと、体のあちこちで「結晶」として析出してきます。析出した尿酸塩の結晶は、炎症を起こして「痛風」をおこします。特に足の親指のつけねの関節は「痛風」を起こしやすい場所です。

日本の痛風の患者さんは100万人程度とされます。また、痛風の原因となる高尿酸血症は、その10倍の1000万人程度いるのではないかと推測されています。

 

痛風以外に高尿酸血症が起こす病気

「高尿酸血症」になると、尿のなかの尿酸も増えるため、「腎臓」の「腎盂」で、「尿酸塩」の結晶が析出し「腎結石」となります。「腎結石」がやがて「尿管」に移動すると、「尿管結石」となり、背中や腰に激痛を生じます。「腎結石」や「尿管結石」をまとめて「尿路結石」と言います。

実は「尿路結石」の主成分として「尿酸塩」は5%程度です。では、「高尿酸血症」と「尿路結石」の起こりやすさは、あまり関係ないのかと言われるとそうではなりません。「尿路結石」のうち9割をしめる「シュウ酸カルシウム結石」や「リン酸カルシウム結石」は、「高尿酸血症」で生じやすくなると言われているのです。

腎結石についてはこちら

尿管結石についてはこちら

そのほか、「尿酸塩」は腎臓の実質の内部にも細かい結晶として析出し、「痛風腎」という病気を引き起こします。「痛風腎」は、尿酸値が非常に高い状態が長期間持続すると起こります。直接、腎不全を引き起こす怖い病気です。このように「高尿酸血症」は泌尿器科や腎臓内科の病気と密接に関係しています。

また、「プリン体」から「尿酸」が作られる過程で、「酸化ストレス」が発生するといわれています。この「酸化ストレス」は、血管を傷つけることで「動脈硬化」をを引き起こし、「心筋梗塞」や「脳卒中」の原因となるとも言われています。「高尿酸血症」は、「痛風発作」や「尿路結石」、「痛風腎」だけでなく、心臓や脳の病気を引き起こすのは、少し意外かもしれませんが、本当はこれが一番問題かもしれません。

 

高尿酸血症・痛風の症状

「突然、足の親指の付け根が痛くなった」、「飲みすぎた次の朝、足首の関節が痛くなって歩けない」、という方は「痛風」かもしれません。「痛風」は 、尿酸塩の結晶が体中の関節に溜まって起こります。尿酸塩の結晶が針状なので、関節に溜まるだけでチクチクとして痛いイメージがあります。しかし実際の痛みの原因としては、以下のように考えられています。

血液中の尿酸値が高いことで「尿酸塩」の結晶が関節に溜まっていきます。それがある時、何かのきっかけで関節液中に剝がれ落ちます。すると、それに対し白血球が反応して攻撃し炎症を引き起こすことで痛みが生じるのです。「痛風」という名前の由来は、「風にあたっても痛む」からだという説が有力です。他にも「風のように全身の関節を移動しながら痛くなるから」という説もあるようです。

「尿酸塩」は重力の関係で、身体の下の方に溜まる傾向があります。そのため、特に足の関節に結晶を作りやすいと言われます。7割程度の人で、初めての症状は足の親指のつけ根の関節に発症します。親指は赤く腫れあがり、激しい痛みを伴い、足を動かすこともままならなくなるというのが特徴です。突然起こるので「痛風発作」と言われ、当日は歩けないほどの痛いのですが、1~2日で痛みはだいぶましになり、3〜7日ほど経過すれば嘘のように痛みが引いて歩けるようになります。

1度痛風発作を経験した方では、痛風の前兆がわかることがあります。発作が起こる部位に、違和感やムズムズ、ピリピリした感じがすると言います。この前兆を感じたらすぐに発作予防の治療することで、違和感は治まり痛風発作を防ぐことができます。

痛風発作は一度おさまっても、半年から1年たつとまた起こります。発作を繰り返すと、痛みの程度が強くなったり、足首や膝の関節など別の関節も腫れたり、発作の間隔が短くなったりしてきます。

なお、痛風患者の95%は男性で、女性は痛風になりにくいと言われています。女性ホルモンには尿酸を排泄する働きがあることが原因と考えられます。

 

高尿酸血症・痛風の原因

尿酸排泄低下型(50%)

日本人で高尿酸血症の原因のうち、もっとも多いタイプとされます。尿酸の排出が低下するような遺伝的要因があると言われています。肥満やアルコールの過剰摂取なども、間接的に尿酸排泄を低下させると言われています。また、慢性腎臓病などで腎臓の機能が低下していたり、利尿薬を使用していたりする場合にも、尿酸の排出が低下し尿酸値が上昇しやすくなります。

尿酸産生過剰型(20%)

尿酸が通常よりも過剰に産生されることで高尿酸血症を生じます。また、尿酸のもととなるプリン体を大量に摂取することも、高尿酸血症の原因になりえます。プリン体は、ビールやレバー類などに多く含まれています。したがって、こうしたものを多く摂取する生活習慣スタイルは高尿酸血症の原因となりえます。

混合型(30%)

尿酸排泄低下型と尿酸産生過剰型が合併しているタイプです。

 

高尿酸血症・痛風の検査、診断

高尿酸血症の診断

血液検査と尿検査で行います。血液検査で尿酸の値が7.0mg/dlを超えると「高尿酸血症」と診断されます。

高尿酸血症が、尿酸の産生過剰によって起きているのか、排泄低下により起きているのかを区別するには、血液検査と尿検査を組み合わせた「尿酸クリアランス検査」を行います。正式な検査は24時間の蓄尿が必要になるので、1時間蓄尿で済む簡便法が行われることが多いです。

それでも、検査が終わるまでに1時間はかかるなかなか面倒な検査となります。さらに簡易的な検査としては、1回の採血と尿検査だけで済む、FEUA(尿中尿酸排泄率)や、尿中尿酸/尿中クレアチニン比などが代わりに参考値として用いられます。これらの検査は比較的手間がかかるため、行わないこともあります

 

痛風の診断

痛みが出ている時に、それが痛風発作かどうかの診断は、典型的な所見があれば特別な検査を必要としないことがほとんどです。しかし、あまり典型的出ない場合などは、整形外科で関節穿刺や関節超音波検査、などを行うことがあります。

痛風発作の特徴
  • 1日以内に痛みがピ-クとなる
  • 以前にも同じような症状があった
  • 1カ所の関節だけに症状がある
  • 関節のが赤くなる
  • 関節が腫れている
  • 片足の親指の付け根に激痛、腫れがある
  • 片足の足首の周りの関節に炎症がある
  • 血液検査で尿酸値が高い

 

またそれ以外にも、血液検査と尿検査を行って、高尿酸血症が原因となる「腎機能障害」がないかどうかがわかります。「尿路結石」ができていないかどうかを調べるためには、尿検査、超音波検査などを行います。

また、高尿酸血症の方は、同じく生活習慣病である「脂質異常症」や「糖尿病」、「高血圧」を合併しやすいと言われています。必要に応じて血圧を測定したり、採血でコレステロール値、中性脂肪、血糖値などの検査を行います。

 

高尿酸血症・痛風の治療

痛風発作の治療

初めて痛風発作が起こった場合、あまりの痛さに驚くことでしょう。最近では某「○まいたち」の「○家」さんが、自分自身の痛風発作の体験談を色々なところで語ったりされていますし、「これは痛風発作ではないか」と自分でわかる人も少なくないと思います。お酒をよく飲む方で、先ほど記載した特徴に当てはまればまず間違いないと思います。とりあえず自分自身でできる対処は

    • 患部を冷やす
    • 薬局で売っている痛め止めを飲む
    • なるべく足を上げて過ごす

医療機関を受診できる状況になれば、できるようだけ早めに受診しましょう。まずは「非ステロイド系消炎鎮痛剤」(ロキソニンやボルタレンなど)の痛み止めを処方されるのでこれを飲みます。それでも痛みが治らない場合や、発作がとても強い場合は、「ステロイド」という抗炎症剤を飲むことになります。

以前に一度痛風発作を起こしたことのある人は、発作が起こる関節部位に、違和感やムズムズ、ピリピリした感じがすると言います。この場合は、前もって病院で「コルヒチン」という飲み薬をもらっておき、これを飲むことにより発作を予防することができます。

痛発発作の痛みは1〜2週間でほとんどなくなります。ただし、「痛風」の原因となった「尿酸値」自体は高いままなので、放っておけば必ず再発します。

 

高尿酸血症の治療

そこで、痛みが治れば、「尿酸値」をさげる薬を飲むようにします。尿酸値を下げる薬には、「尿酸産生抑制薬」(ザイロリック、フェブリク、トピロリックなど)と「尿酸排泄促進薬」(ユリノーム、ユリスなど)の2つのタイプの薬があります。

どちらのタイプの薬を飲むかを決めるにあたり、「尿酸クリアランス検査」を行い、「高尿酸血症」が「尿酸排泄低下型」なのか「尿酸産生過剰型」なのかを検査で調べる場合もありますが、かなり手間のかかる検査です。そこでまずは少量の「尿酸産生抑制薬」を飲み始めて、「尿酸値」の下がり具合をもながら量を増やしたり、薬の種類を帰ることが多いです。治療目標は「尿酸値6.0mg/dl以下」です。

「高尿酸血症」の飲み薬による治療で注意する点が2つあります。

1つ目は、「痛風発作が起こっている最中には、尿酸を下げる薬は始めない」ことです。発作が治る前に尿酸値が急に下がると余計に痛みがひどくなります。

2つ目は、「尿酸排泄促進薬」で治療する場合は、尿のpHが酸性に傾いていると「尿路結石」がかえってできやすくなってしまうという点です。「尿酸」を尿中にたくさん排泄させることで血液中の「尿酸値」を下げる薬なので、尿中の「尿酸」の濃度は上がるわけです。「尿酸塩」は酸性で結晶化しやすくなる性質があります。そこでこのタイプの薬を飲む場合は、一緒に「尿アルカリ化剤」(ウラリットなど)を飲めば「尿路結石」を防ぐことができます。

 

痛風発作を起こしたことがない方であっても、検診などの採血検査で「尿酸値」が高い場合には薬を飲んだほうがよいでしょう。治療が必要となる「尿酸値」の基準は以下の通りとされています。ちなみに痛風発作を起こしたことがあれば、尿酸値に関わらず尿酸を下げる治療をしたほうが良いと思います。

  • 7mg/dl以上、過去に痛風発作あり
  • 8mg/dl以上、腎障害・尿路結石・高血圧・糖尿病・心疾患あり
  • 9mg/dl以上

 

高尿酸血症・痛風の予防、注意点

高尿酸血症・痛風の予防のためには生活習慣の改善が非常に重要です。これは、ある意味治療とも言える非常に重要なことです。

食事の量自体を抑えて体重を減らすことが最優先です。これだけで尿酸値はある程度下がります。

アルコールを減らしましょう。ビールはダメだけど酎ハイや「プリン体ゼロの発泡酒ならよい」と思っていますか?実は、お酒であればなんでも、尿酸値は上がります。もちろん、お酒にプリン体自体が含まれていないほうが多少はましなのかもしれません。ところが、「尿酸」は体内でもたくさん作られています。アルコールは、体内で「尿酸」が作られる量を増やす作用があるのです。

プリン体を多く含む食品(レバー、白子、肉、イワシなど)の摂取を控えましょう。

しっかりと薬を飲んで尿酸値が6.0mg/dLをキープできれば、痛風発作は滅多に再発しないとされています。高尿酸血症の薬は長期間飲み続ける必要があります。しっかり飲めば確実に尿酸値は低下します。ところが、やめてしまうと1週間も経てば元に値に戻ってしまうといわれていますので、注意しましょう。

 

泌尿器科専門医 石村武志

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