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腎移植マニュアル 8.腎臓を提供するには ~ドナー~

 腎移植は非常に優れた腎代替療法ですが、最大の難点は、腎臓を提供してくださるドナー(腎提供者)がいないと治療ができない、ということです。献腎移植は、残念ながら臓器提供数からすると、末期腎不全が近づいた時にすぐに取り得る選択肢ではありまません。そうなると、このような状況で腎移植を希望する場合は生体腎移植ということになります。ここ数年で行われた腎移植のうち、9割以上が生体腎移植であることもこの現実を表していると言えます。このように腎移植というのは誰でも受けられる治療ではありません。ご家族のどなたかが、生体腎移植のドナーとして腎臓を提供してくれるというのであれば、その方は非常に幸せな方と言えます。

 さて、では生体腎移植なら誰でも受けられるのでしょうか。もちろんそのためには、まずご家族や親戚のどなたかが腎臓を提供してくださると言い出してくれないと始まりません。腎臓を提供してくださる方自身が自分の意思で決めた、というのが大事です。これは当たり前かもしれません。また、腎臓を提供してもよりとわれる関係性としては、6親等以内の血のつながった親族と、配偶者を含む3親等以内の配偶者側の親族に限られています。これらはあくまで前提条件で病院に来る以前の問題ということになります。

 この条件をクリアしていても、医学的にもさまざまな条件が決められています。大まかに言うと、腎臓を提供するドナーが受けるマイナス点が最低限になるようにする必要があると言うことです。もちろん2つある腎臓が1つになるわけですし、自分の健康にとっては不要な手術を受けないといけないわけですので、マイナス点がまったくないわけではなりません。しかし自分自身の人生に大きく関係のある家族や親戚の1人が元気になることで、そのマイナス点と引き換えに精神面や生活面でのプラス点が得られるからこそ認められている治療なのです。こんな特殊な状況は医学的にはあまりありません。

 だからこそ、腎臓を片方提供しても良いとわれる医学的な条件はかなり厳しめに定められています。残り1つの腎臓になっても、その1つの腎臓の働きで、生涯にわたってに不自由なく生活を続け、寿命を全うするまで元気に暮らしていけることが保証される、と判断されることがまず第一条件です。

 また腎臓の働き以外にも、体のあらゆる臓器の異常がないかどうかを調べることになっています。例えば心臓の働きが普通よりも少し悪い方がいたとします。例えばその方の腎臓に癌ができており、すぐに手術で腎臓を取ることが癌を治すためには最善の治療だったとします。もちろん全身麻酔で手術をすることで、心臓に負担がかかって心不全となり、何らかの命に関わる合併症を生じる可能性は少しあるかもしれません。それでも手術はします。その方の健康、寿命にとって、心臓が悪くてもリスクを負ってすぐに手術をする方が良いと判断するからです。
 
 では、同じくらい心臓が悪い方がドナーとして腎臓の提供を希望した場合はどうでしょう。いくら腎臓の働きが良くても手術はしません。それは、その方が腎臓を提供するために麻酔をかけて手術を受けるのは、その方自身の病気を治して、健康、寿命に良い影響が出ることはないからです。

 このように、生体腎移植で腎臓を提供するためには、その方自身の健康のデメリットが最小限になるように、かなり厳しく基準が設けられています。逆にその基準をクリアすれば、相当に高い確率で安全に手術が受けられ、また一生の腎臓の働きが保証される、ということになります。

 また腎臓をもらって腎移植を受ける人(レシピエント)の立場からも、ドナーの条件があります。それは、腎移植によってレシピエントの体内に持ち込まれてしまう可能性がある、感染症や悪性腫瘍がないことです。活動性の結核や未治療の肝炎ウィルス、HIVなどが、血液を介して腎臓と一緒にレシピエントの体内に入ったとします。レシピエントは腎移植を受けると免疫抑制剤を内服するため、免疫の働きが低下するため、これらのウィルスや細菌が増殖して命に関わる全身感染症を引き起こす可能性があります。

 悪性腫瘍というのはいわゆる癌などの病気です。癌が人にうつる、というのは通常ではあり得ないことです。ただし腎臓を移植してそれが生着するのも普通はあり得ないことなのです。そのあり得ないことが、免疫抑制剤を内服することで可能になります。つまり自分自身以外の細胞や組織が体内に入っても、それらが免疫の働きで排除されることなく生着するようにあえて免疫抑制剤を飲んでいるわけなのです。癌が持ち込まれレシピエントの体内で生着して進行する、という通常ではあり得ない自体が起こり得るわけです。

 よって、未治療の癌を持った方は腎臓を提供することができません。では以前に癌の手術をうけたことがあり、すでに10年以上経過して最初を認めていない方はどうでしょう。この場合、通常は腎臓の提供が可能です。治療して何年間経過していれば腎臓を提供できるかに関しては、癌ができた臓器、治療をした段階での進行度合いや悪性度によって違います。一般的には悪性腫瘍の根治手術してから、3年以上経過していて、定期検診で最初がなければ腎臓を提供できる、としていますが、極めて悪性度の低いごく初期の胃がんなどでは、ほとんど最初する可能性がないと判断して治療してすぐに提供可能となったりすることもありますし、かなり進行した乳癌を手術と放射線療法と抗がん剤治療を組み合わせてやっと完治した、などと言う場合は、相当年数が経過しても様子を見た方が良いことなどもあります。

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