メニュー

腎移植Q&A|なんかブツブツが、、帯状疱疹にご注意

「脇から背中にかけて数日前からむずむず、ピリピリと痛かったけど筋肉痛かと思って様子を見てました。触ってみるとなんかぶつぶつが出来てるような気がするんです」、、

 

 

定期外来診察で受診された時に、たまたまこのように教えてくださる方もいますし、痛みと赤いぶつぶつが出て近所の皮膚科を受診した、と後から報告してくださる方もいます。実はこれ、要注意の症状なんです。

 

このような症状が出た場合「帯状疱疹」の可能性があります。「帯状疱疹」とは「水痘帯状疱疹ウィルス」というウィルスが原因で起こる病気です。

 

「水痘帯状疱疹ウィルス」は、こどもがかかる「みずぼうそう」の原因になるウィルスです。

 

多くの大人の方は、子供の頃に「みずぼうそう」にかかった経験があると思います。

 

 

「みずぼうそう」にかかったことがあれば「水痘帯状疱疹ウィルス」に対する抗体を体内に持ってはいますが、同時にウィルスも体内に持っているということになります。

 

「みずぼうそう」になったことがある人は、「帯状疱疹」になる可能性があるということになります。

 

そういうことかというと、「みずぼうそう」が治った後も、その原因となった「水痘帯状疱疹ウィルス」は体内の「神経節」というところに「潜伏」するのです。少ない量のウィルスが体内に残り続けるということです。

 

そして、疲れで体力が落ちて「免疫」が弱まってくると、体内に「潜伏」していたウィルスが増えて「帯状疱疹」を引き起こします。

 

 

一般的には年齢ともに抗体の量が減ってきた50歳以降の方が、ストレスや体調不要で免疫力が落ちた時に発症します。

 

ところが、腎移植患者さんは「免疫抑制剤」を飲んでいるので、特に「帯状疱疹」になりやすく、30〜40歳代でも「帯状疱疹」になることがあります。

 

「帯状疱疹」になると、最初のうちは背中や脇、首など体の片側にピリピリ、むずむずとした痛みやかゆみを感じるようになります。

 

顔やお尻などに症状が出ることもあります。それから数日~1週間すると、痛みのあった場所に赤いぶつぶつが出てきて、そのあとぶつぶつが水ぶくれに変わり、1週間くらいすると水ぶくれが破れてただれてきます。

 

 

この時期は激しい痛みを感じることが多く、2〜4週間くらい経つとかさぶたになって治っていくといわれています。また重症の場合は発熱や頭痛が出たり、リンパ節が腫れたりすることもあります。

 

最初のピリピリやむずむずだけではなかなかわからないことも多いのですが、そのあとに出てくる赤いぶつぶつや水ぶくれは、「帯状疱疹」という名前の通り、「帯状」に1箇所にかたまって出てくるので、この段階でこの病気の存在を知っていれば「もしかして?」となるわけです。

 

 

なぜ「帯状」になるかというと、一つの「神経節」からその支配領域にウィルスが広がるからです。例えば肋間神経節なら、その肋骨に沿って帯状にぶつぶつが出ます。

 

やがてぶつぶつや水膨れはかさぶたになって自然に治っていくのですが、「帯状疱疹」の厄介なところは、ぶつぶつや水ぶくれが治った後も、針で刺すような、焼けるような、非常に強い不快な神経痛が残ることがあることです。

 

この痛みは「帯状疱疹後神経痛」といって、夜も眠れないほどという方もいるほか、痛み止めが効きにくいのが非常に困ります。

 

またひどい場合には腕が動きにくくなったり、顔にできた場合は「顔面神経麻痺」や「聴覚障害」などの後遺症が残ることもあります。

 

 

このような後遺症が残らないようにするには、早めに治療をすることが重要と言われています。

 

「帯状疱疹」の治療には、「抗ウイルス薬」が使われます。「抗ウイルス薬」とは、その名の通りウイルスの増殖を抑えて炎症や痛みの症状を改善し「帯状疱疹後神経痛」などの後遺症を防ぐ薬です。

 

 

帯状疱疹に対する「抗ウイルス薬」には、飲み薬や塗り薬、点滴などがありますが、一般的には飲み薬が使われることが多いです。

 

できるだけ早めに飲み始めるほど治療効果が期待できるほか、「帯状疱疹後神経痛」になりにくいとされています。

 

逆に発症してから時間が経って開始しても十分な効果が得られにくいことが多く、重症の場合は入院して点滴の「抗ウイルス薬」を投与することもあります。

 

一旦、「帯状疱疹後神経痛」になってしまうと、本当に辛い痛みが続くことが多いので、「腎移植」を受けた方は、「帯状疱疹」がどんな病気か、その特徴的な症状について一度は聞いて頭の片隅に残しておきましょう。

 

そして、「もしかして帯状疱疹かもしれない」と思った時は、なるべく早めに「腎移植」の主治医やレシピエントコーディネーター、あるいは近所の皮膚科などに相談し、早めの治療を受けて「帯状疱疹後神経痛」にならないように注意が必要です。

 

さて、最近テレビなどでもCMが流れているように、「帯状疱疹」を予防するためのワクチンがあります。

 

 

腎移植患者さが「帯状疱疹」のワクチンを接種した方がよいかどうかについては、まだはっきりとした方針が定まっていません。

 

というのも、腎移植患者さまは免疫抑制剤を内服しているため通常の方よりもワクチンを接種しても抗体の量が増えにくいのではないかと考えられるためです。

 

ただしそれ以上に、腎移植患者さまは免疫抑制剤を内服しているため通常の方よりも「帯状疱疹」になりやすいといえるので、おそらくワクチンを受けることのメリットはあるのではないかと予想されます。

 

現在、腎移植患者さまが「帯状疱疹ワクチン」を打ったほうが良いのかどうか、の臨床試験が行われている最中と聞いています。早く結論が出てほしいものです。

 

注意

 

今後、もしも腎移植患者さまが「帯状疱疹ワクチン」を接種したほうがよい、となったとしても、絶対に気をつけないといけないことがあります。

 

 

それは「帯状疱疹ワクチン」には、弱毒化された生きたウイルスが含まれる「生ワクチン」と、ウイルス表面タンパクに対する抗原が含まれる「サブユニットワクチン」(不活化ワクチン)があるためです。

 

一般の方は「生ワクチン」を接種することでそのウィルス自体に感染することはまずないのですが、腎移植患者様は、免疫抑制剤を内服しているため、弱毒化されているとはいえ生きたウイルスが含まれる「生ワクチン」を接種することでそのウィルスに感染する危険性があります。

 

そこで、腎移植患者さまが「帯状疱疹」のワクチンを受けられることになった場合でも、決して「生ワクチン」を接種しないよう注意が必要です。

 

ちなみに「水痘帯状疱疹ウィルス」が「みずぼうそう」を起こす時と、「帯状疱疹」を起こす時の違いは、「初めてこのウィルスにかかったのか、それとも以前にかかったことがあり潜伏していたウィルスが体力が落ちて増えたか」、の違いなのです。

 

新生児や大人が初めて「水痘帯状疱疹ウィルス」に感染して「みずぼうそう」にかかると重症になりやすいと言われています。

 

しかも「腎移植」を受けて「免疫抑制剤」を飲んでいる大人が初めて「水痘帯状疱疹ウィルス」にかかると、「みずぼうそう」では済まず「播種性水痘帯状疱疹ウィルス感染症」という命を落としかねない怖い状態となります。

 

そこで「腎移植」を受ける前には必ず採血検査で、過去に「みずぼうそう」にかかったかあるいは「水痘帯状疱疹ウィルスワクチン」をうけたかによって、「水痘帯状疱疹ウィルス」に対する抗体を保有していることを確認して、保有していない方には必ず「水痘帯状疱疹ウィルスワクチン」を受けていただくこととなっています。

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME