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慢性前立腺炎

「慢性前立腺炎」は、若年〜中年男性に多い病気です。尿道や陰嚢内、会陰部、下腹部などに痛みや不快感などつらい症状が出ます。前立腺に細菌が感染して起こりますが、座り仕事などで骨盤内の血流が悪くなると、細菌感染がなくても起こります。抗菌薬や抗炎症薬、漢方薬の飲み薬等で治療をしますが、治りにくいことも多いやっかいな病気です。

目次

 

慢性前立腺炎とは(概要)

つらいんです、本当につらいんです。本当につらそうにされている方が多いので、何とかしてあげたいんです。治る人は割とスッと治るですが、治りにくい人が結構多いので困ることの多い病気です

 

 

50歳以下の若い男性が泌尿器科に来る理由で多いのが、尿道炎、尿管結石、そしてこの「慢性前立腺炎」です。尿道や陰嚢内(キンタマ)、会陰部(えいんぶ;玉ぶくろと肛門の間の奥の方のことです)、下腹部などに痛みや不快感が出ます。

 

 

症状が出るのがデリケートな場所なので、どうしても気になってしまうことが多いようです。そして気にすればするほど、症状がだんだんとひどくなる傾向があるようです。

 

ただ一説によると、実は「慢性前立腺炎」は、男性なら誰でも一生のうちに一度はなるとも言われている、ありふれた病気です。慢性前立腺炎になる方は真面目そうな方が多い印象です。症状に真剣に向き合うんだと思います。たぶん、泌尿器科医は全員そう思っていると思います。

 

自分自身も「あ、慢性前立腺炎の症状ってこんな感じなのかな?」と、まれに会陰部から恥骨の裏側にキーンとした痛みを感じることがあります。でも何かしている間に忘れてしまうんです。私が不真面目ということではないと思っているのですが。。

 

乱暴な医師が「精神的な病気だ」などと言っているのを聞いたこともあります。私はそうは思いません。何かの原因があるはずです。ただ原因がよくわかっていないんです。

 

 

ひとつ言えることは、高齢男性がこの病気で苦しんでいるのはあまり見たことがないということです。つまり、時間がかかることも多いですが、根気よく治療すれば多くの方は症状が改善するはずです。色々と試してみましょう。

さて、「前立腺」とはなんでしょう。「前立腺」は男性にしかなく、精液の成分を作っているクルミのような形の臓器で、「膀胱」の出口で「尿道」を取り囲むように存在します。

 

 

膀胱の出口、と言っても体の中のどのあたりなのか感覚的にわかりにくいと思います、表現が難しいですが、肛門と玉袋裏側の間の奥の方(「会陰部」といいます)といった感じです。。

 

「慢性前立腺炎」は原因により大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつは、尿の出口から入った細菌が「前立腺」に感染することが原因となるタイプです。これを「慢性前立腺炎」の中でも、「慢性細菌性前立腺炎」と呼び、抗菌薬で治療します。

もうひとつのタイプの「慢性前立腺炎」は、骨盤内の血液のめぐりが悪くなることで、「前立腺」に炎症が起こって発症します。

細菌感染以外の原因で起こるため「慢性非細菌性前立腺炎」と言います。「慢性非細菌性前立腺炎」は、長時間の座り仕事や、精神的なストレスが原因で発症することもあります。

実は、この「慢性非細菌性前立腺炎」が「慢性前立腺炎」の中でも多く、そしてやっかいなのです。

 

 

「慢性非細菌性前立腺炎」は、別名「慢性骨盤痛症候群」とも呼ばれることからわかるように、痛みなどの不快な症状が長く続く、という特徴があります。

一部の方には、前立腺の炎症を和らげる飲み薬や漢方薬がよく効くことがあります。ただし、これらの薬で治りにくいことも多く、前立腺マッサージ、磁気治療、その他の薬剤など、さまざまな治療を根気よく試していく必要があります。

 

慢性前立腺炎の症状

☑︎ 会陰部痛(ときに激痛)

☑︎ 排尿時痛、不快感、違和感

☑︎ 頻尿、残尿感

☑︎ 下腹部・鼠蹊部・陰嚢部痛

☑︎ 射精時痛違和感

 

尿をした時に尿の出口である「外尿道口」や、尿の通り道である「尿道」、「下腹部」に痛みを感じます。

これを「排尿時痛」といいます。下腹部の痛みはお腹の一番にある恥骨」という骨の裏側あたりのことが多いようです。

 

また、場合によっては尿をしていない時でも痛みが出ることもあります。痛みは肛門と「陰嚢(玉袋)」の間の奥の方、「会陰部痛」にとして感じることが多いです。

痛みは非常に強いものから、なんとなくの不快感程度の方まで様々です。

 

尿を出してもまたすぐに行きたくなる「頻尿」「残尿感」射精時の違和感や痛みなどの症状がでることもあります。

人によっては下腹部から下半身にかけての漠然とした痛みやだるい感じ、鼠径部(そけいぶ;ブリーフパンツのライン)、ふとももなど、前立腺とは離れた場所に痛みや不快感を感じることもあります。

このように、痛みの場所や程度など、一定の症状ではないことも「慢性前立腺炎」の特徴と言えます。

 

慢性前立腺炎の検査、診断

 

まずは、問診で上記のような症状を聞き、場合により「慢性前立腺炎症状スコア」という「慢性前立腺炎」の診断や重症度を調べる問診票を記載しててもらい、症状を把握します。

 

身体の診察としては肛門から指を入れて前立腺を触診する「直腸診」を行います。前立腺に炎症がある場合、「直腸診」で「前立腺」に腫れや痛みなどがあることが多いです。

「直腸診」は比較的重要な検査です。あまり痛いわけでもないのですが、かといってあまり気分のいい検査ではありませんので、どうしても受けたくない方には無理には行いません。

 

「尿検査」を行い尿に細菌や白血球が混じっていないかを調べます。また「尿検査」が正常でも、「直腸診」の際に「前立腺」を指で圧迫した後に、尿道から出てくる前立腺圧出液」や、「マッサージ後尿」を取って顕微鏡で調べることで細菌や白血球が確認されることもあります。

尿検査についてはこちら

 

「尿検査」や「前立腺圧出液」で細菌や白血球を認める場合は、「慢性細菌性前立腺炎」の可能性が高く、尿培養検査で細菌種類を調べます。また性感染症であるクラミジアなどが原因となった「慢性細菌性前立腺炎」も増えてきています。

感染のきっかけとなるような性行為に心当たりがある場合は、尿のクラミジアPCR検査を追加します。

 

また前立腺の腫れの程度や、「前立腺結石」がないかどうか、尿が全部出し切れているかどうか、などを確認するため「超音波検査(エコー)をすることもあります。

超音波検査についてはこちら

 

慢性前立腺炎の治療

細菌感染が原因で起こった「慢性細菌性前立腺炎」と診断された場合は、まずは抗菌薬を内服します。

最低でも2週間は続けて飲む必要がありますが、「慢性細菌性前立腺炎」は治りにくいことも多く、長期間の服用が必要となることもあります。

 

さまざまな検査の結果、細菌感染が認められない場合は「慢性非細菌性前立腺炎」と診断し、まずは抗炎症作用のある植物製剤や漢方薬などで治療をします。

また人によっては、精神安定剤や痛み止めなどが効果的なこともあります。

 

 

肛門から指を入れて直腸側から前立腺を指でこする「前立腺マッサージ」を定期的に行うことが、治療として有効な場合もあります。

薬の治療がなかなか効かない場合は試してみる価値はあります。なかには少しでもマッサージをサボると症状がひどくなるということで2週間毎に通われるような方もいます。

ただし、「前立腺マッサージ」は、もちろん人によっては不快な感触がしますので、無理に行うことは決してありません。

 

「慢性前立腺炎」は治りにくいことが多く、いくつかの薬を組み合わせたり、効かない場合は別の薬を次々と試したり、「前立腺マッサージ」を比較的頻繁に定期的に行ったり、と根気よく治療を続けることが重要です

症状が非常に強く、どうしても保険診療内の治療で良くならないかたは、少々費用がかかりますが、自費診療の提案もあります。

 

 

例えば、保険診療では前立腺肥大症にしか適応がないPDE5阻害薬を「慢性前立腺炎」に使用すると症状がマシになることがあります。

また、過活動膀胱や腹圧性尿失禁に対する「干渉低周波装置」で治療をすることで、症状が和らぐこともあります。柔軟に対応しますので、困っている方はご相談ください。

 

慢性前立腺炎の予防と注意点

治療を始めて数週間で症状がマシになることもありますが、不快な症状が強いのに薬を飲んでもなかなか良くならず、生活に支障をきたす、という方も多い病気です。

うえで説明したように、複数のタイプの原因があり、その区別がなかなかはっきりつけられないことがあったります。両方存在したりする場合もあるので、色々な治療を根気よく試すのが大事です。

時間はかかっても最終的には治ることが多いです。

 

 

骨盤内の血のめぐりが悪くなるような生活習慣が、治りにくい要素となっていることもあります。喫煙や過度な飲酒を避ける、長時間の座り仕事では休憩をとってストレッチを行う、自転車、バイクに乗らないようにする、疲れやストレスを貯めないようにする、などの工夫も必要です。

 

神戸市東灘区 摂津本山 いしむら腎泌尿器科クリニック院長

泌尿器科専門医 石村武志

 

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