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腎移植Q&A|手や足にあざができます

腎移植をして長期間、特に10年以上経過した方によく言われることです。

 

 

「あざ」は、皮膚の下にある毛細血管の壁が破れてそこで内出血を起こして出来ます。普通の人でも机の角にスネをぶつけたりした時には、数日間は青あざが消えなくなります。

 

腎移植後は確かにちょっとしたことであざができます。青あざというより、もっと皮膚の下で浅いところに赤黒いあざができることが多いです。

 

これは、免疫抑制剤のひとつとして内服している、ステロイド(メドロール、プレドニン)の影響が大きいです。

 

ステロイドは副腎皮質ホルモンとも呼ばれ、もともと体内の「副腎」という臓器から出されるホルモンです。非常に色々な作用を持ったホルモンなのですが、元来は人間がなんらかのストレスにさらされた時に出るホルモンです。

 

 

ストレスに打ち勝つように、一時的に無理矢理パワーを発揮して危険を回避するという感じでしょうか。どこかの漫画で聞いたような話ですね。

 

具体的には、このホルモンが出ると、血圧や血糖値があがったり、目が覚めたり、炎症や異常な免疫反応を押さえたりすることができます。

 

ただし、あくまで一時的に無理をしてその場をしのぐためのパワーを振り絞るような作用ですので、大量の副腎皮質ホルモンが長期間出っ放しになると、今度は体にとって色々な不都合が生じます。

 

 

副腎に腫瘍ができるクッシング症候群という病気があります。この病気になると副腎にできた腫瘍から副腎皮質ホルモンが大量に出続ける結果、糖尿病や高血圧、肥満になるほか、骨粗鬆症、精神障害、骨粗鬆症、皮膚が薄くなり毛細血管が浮き出てくる、などさまざまな症状が出ます。

 

このクッシング症候群は泌尿器科で手術をする病気ですので、私も今まで何度か担当したことがあります。ひどい方では、本当に皮膚は触ったら破れてしまうほどに薄く、毛細血管がたくさん浮き出てきていました。このような方では手術と時でも、体の中の組織をこすったらベロっと剥がれる、という感じで非常にもろくなっています。

 

腎移植後の方は、免疫抑制剤としてステロイド薬つまり副腎皮質ホルモンと同じ作用のある薬を長期間内服します。ステロイドの作用のひとつである、異常な免疫の働きを抑えるというのを利用して、拒絶反応を抑えるわけです。

 

 

50年くらい前は免疫抑制剤の種類が少なく、このステロイドだけ、もしくはあともう1種類だけで拒絶反応を抑える必要がありました。

 

ですので必要なステロイドの量は今よりずっと多く、副作用で顔が丸くなったり、ひどい骨粗鬆症が起こったりすることが割とよくありました。

 

 

最近では優れた免疫抑制剤が何種類も開発されたので、できるだけステロイドの投与量を減らすようにした結果、副作用は相当減っています。

 

とはいえ、ステロイドを完全に中止してしまうことで、一部の方に拒絶反応が生じることがあります。そこでごく少量の投与を継続することになりますが、長期間経過すると副作用が生じてきます。そのひとつが、皮膚が薄くなることと、毛細血管の壁が弱くなることです。

 

皮膚が分厚ければある程度の衝撃も跳ね返すことができますが、ステロイドを長期間飲んでいると、皮膚がペラペラに薄くなりクッション効果がなくなります。

 

そのうえに毛細血管の壁が薄くなって、少しの衝撃で破れるようになっています。手などがどこかにぶつかった時に、自分では気づかないくらい軽かったとしても、内出血が起こってあざができてしまうわけです。

 

またあざの原因はステロイドだけではありません。

 

腎移植患者さまは、さまざまな理由で「血をさらさらにする薬」を飲んでいることが多いです。例えば過去に狭心症でステント留置をされた方、脳梗塞をされたことがある方、などです。

「血をさらさらにする」ということは出血が止まりにくくなると言うことです。

 

ステロイドのせいで毛細血管の壁が薄くなっている方が、このような薬を飲んでいると、本当にこちらが申し訳なくなるくらいあざだらけになることがあります。

 

ただ、いずれも非常に大事な薬で、あざができるからと言ってやめるのもどうかと思います。あざができるのはある程度仕方ないことと考えています。

 

ただしひどくなると内出血を起こした部分の皮がめくれて感染を起こすことがあります。

 

できるだけあざができないような工夫と、もしも皮がめくれて痛みが出てきているような場合は、主治医に連絡して対応を聞いた方がよいでしょう。

 

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