尿が濃い(尿の色がおかしい)
正常な尿の色は薄い黄色です。これは、尿中に含まれるウロビリンという物質の色です。脱水で体内の水分量が足りない時は、腎臓が尿を減らして水分バランスを調整します。その結果、尿中のウロビリンが濃くなるので、色も濃くなるのです。尿が濃い黄色になっているということは、①腎臓がしっかり働いていて かつ ②脱水傾向である、ということになります。その他にも、赤・オレンジ・紫・黒など、異常な尿の色があります。なかには治療が必要な場合もありますので、泌尿器科や腎臓内科を受診して原因を調べましょう。
さまざまな尿の色
- 濃い黄色(脱水状態)
- 透明(水分過剰、腎機能低下)
- 赤(血尿、ヘモグロビン尿)
- オレンジ色〜茶褐色(ビリルビン尿、ミオグロビン尿)
- 紫(Purple urine bag syndrome)
- 黒 (パーキンソン病治療薬内服)
- 白(膀胱炎など)
尿はなぜ黄色いか
血は赤いですね?これは血液のなかの赤血球に含まれる「ヘム」という蛋白質の色です。赤血球が寿命となって壊れると、「ヘム」は血液〜肝臓〜腸〜血液〜腎臓と巡る間に、ヘム〜ビリルビン〜ウロビリノーゲン〜ウロビリンと形を変えて、尿の中にわずかに出てきます。このウロビリンが黄色なので尿は黄色いのです。血の赤色と尿の黄色と関係があるなんて不思議ですね。
異常な尿の色① 濃い黄色
簡単にいうと、尿の色が濃い黄色になるのは脱水のせいであることがほとんどで、水分を摂らずに汗をかけば、健康な人では誰でもそうなります。
「全然水を飲まなかったら尿の色がとても濃くなって、、」と言って泌尿器科を受診された方が、今までに何人かいらっしゃいました。
確かに、長時間炎天下で作業をした後など、わかっていても「めちゃくちゃ濃い黄色だな、大丈夫かな?」と思うことはありますし、心配になるのかもしれません。
ただ、腎臓が尿を作る仕組みを知っている者としては、「それは腎臓がしっかり働いている証拠だな、脱水になっている証拠だから水分をしっかり補給しないと」と内心思います。
また医療者ではなくても、水分摂取が少なくて尿量が減れば、経験的に尿が濃くなることはご存知の方も多いと思います。
一時的に尿の色が濃くなったとしても、十分に水分補給をして元に戻れば多くの場合は特に心配はありません。
もちろん、脱水は良いことではありません。長時間続くと「腎不全」の原因になります。
また、短期間でも極度の脱水と体温上昇が重なると、いわゆる「熱中症」となり、意識障害などを生じ、命の危険に晒されることもあります。
自分でもびっくりするくらいの濃い尿は、「脱水に気をつけろ」という体の黄色信号なのです。
異常な尿の色② 透明
ビールを大量に飲んだりすると、水なんじゃないかと思うくらい尿の色が薄くなり透明に近くなります。理由は尿の色が濃い黄色になる逆です。ビールはほとんどが水分ですから、大量に水分を摂取したのと同じことになり、体内には余分な水分が溜まりかけます。
そこで、腎臓はその余分な水分を、尿として出して体液量を減らそうとします、また、アルコール自体に利尿作用があるので、尿量はとても増えます。するとウロビリンの濃度が究極に薄まり、ほとんど水みたいに透明なおしっこが出るのです。
ただし、尿の色が濃くのなるのは、①腎臓がしっかり働いていて ②かつ脱水傾向であるという条件がありました。いっぽう、尿の色が薄くなるときは、①「水分過剰である」もしくは②「腎臓がしっかり働いていない」可能性があると言えます。
「水分過剰である」については上記の通りです。しかし「腎臓がしっかり働いていない」場合にも尿は薄くなります。腎臓の働きが悪くなり、適切に体内の水分量を調整できないと、尿が濃縮されずに薄いまま大量に出るようになるのです。だからよく、「腎不全の初期症状は夜に何度も尿に行くことだ」というわけです。
異常な尿の色③ 赤色
これはもう説明するまでもなく「血尿」です。特に人間の目でみてわかるくらい赤い尿は「肉眼的血尿」と言われます。色が濃くなるとトマトジュースのような色、薄くなるとスイカの汁のような色、と表現されることもあります。
また古い出血が膀胱に溜まっていると、赤黒いかたまりとして出てくることもあります。また、その古い血の塊が溶けて出ると赤ワインのような色と表現されることもあります。血尿の原因は、腎結石、尿管結石、膀胱結石、前立腺結石、膀胱炎、腎細胞癌、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌、腎炎、菲薄規定膜病など色々あります。別ページで詳しく説明しますが。必ず早期に泌尿器科、腎臓内科を受診しましょう。
少しまれな場合ですが、赤い尿が全て血尿というわけではありません。赤血球が大量に壊れて出る「ヘモグロビン尿」は、透明感のある赤い色をしています。血尿との違いは、もちろん非常に微妙ですが、血尿はあまり透明感がなくやや濁った赤色、ヘモグロビン尿は透き通った赤色で、みる人が見ればわかります。
異常な尿の色④ オレンジ色〜茶褐色
黄疸(おうだん)を知っていますか?肝臓が悪くなると眼(白眼の部分)や手など、身体中が黄色っぽい色になる状態です。黄疸は、主に肝臓の病気によって起こりますが、溶血性貧血といって赤血球が壊れるような病気でも起こります。
黄疸の原因は、茶褐色〜緑のような色をした「ビリルビン」という蛋白質です。特に肝臓が悪くて出る黄疸の場合、尿のも出てくるため「ビリルビン尿」となり、オレンジ〜茶褐色のような色になります。
またよく似た色の茶色い尿に「ミオグロビン尿」があります。これは怪我や薬の副作用などで筋肉が大量に壊れたときに出てくる尿です。ビリルビン尿とよく似た色ですが、「ビリルビン尿」は泡が多くてその泡の部分も茶色だったり角度によっては少し玉虫色に緑っぽくなるのに対して、「ミオグロビン尿」は透明なさらっとしたコーラのような色です。少しマニアックになってきました。。
そのほか、尿がオレンジ色っぽくなる原因として、総合ビタミン剤やサプリメントなどがあります。これらに含まれるビタミンB2は、尿の中に排泄されるのですが、その色がオレンジ色なのです。オロ○ミンCやリポ○タンDを飲むと尿がオレンジになるのもこのせいです。特に病気ではありません。
異常な尿の色⑤ 紫色
青いおしっこなんてあるわけない、と思うかもしれません。私も医者になりたての頃、病棟の看護師さんに「先生、バルン(尿道カテーテルのこと)が入っている患者さんなのですが、管の中の尿が青くなってて袋も真っ青です」と初めて言われたときは、からかわれているのかと思いました。
しかし、その後も年に数回は決まって、このように尿道カテーテルが入っている方で尿が青くなる経験を繰り返しています。これは「Purple urine bag syndrome」(直訳すると紫尿袋症候群)といって、ある種の細菌が尿中の物質を分回して紫色の色素を出すからだそうです。ちなみに尿の黄色と混じってか青く見えることもよくあります。なぜか自然と元に戻ることが多い気がします。
異常な尿の色⑥ 黒色
パーキンソン病の治療薬である、レボドパという薬で尿の色が黒くなることがあります。また濃い血尿は膀胱の中で血の塊りを作ります。すると、海苔の佃煮のような黒い塊として尿に混じって出てくることがあります。
異常な尿の色⑦ 白色
「膀胱炎」などの尿路感染症で尿が白く濁ることがあります。その場合は、排尿時痛などの症状を伴うことが多いです。また、シュウ酸やリン酸などを多く含むほうれん草や肉類などを大量に摂取すると尿が濁ることがあります。詳しくは別ページで説明しています。