メニュー

腎移植マニュアル 3  腎代替療法とは

IgA腎症や急性糸球体腎炎などの腎炎、生まれつきの腎臓や尿路の病気である先天性尿路奇形症候群、多発性嚢胞腎、など腎臓自体の病気で腎臓の働きが悪くなると、やがて「末期腎不全」となります。

 

また腎臓自体の病気以外でも、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、肥満などがもとでCKD(慢性腎臓病)となり、徐々に腎臓の働きが悪くなることで、いずれは「末期腎不全」になります。特に、糖尿病が原因で「末期腎不全」となる方が近年非常に増えています。

 

「末期腎不全」になった方は、腎臓の働きがいよいよ限界にきているため、水分や老廃物が溜まりすぎることによって、むくみや呼吸困難、異常高血圧、吐き気や腹痛などが出てきます。この状態を放置すれば「心不全」や「高カリウム血症」などで最終的には心臓が止まってしまい命を落とすこととなりかねません。

 

このような状態で生命を維持するためには、腎臓が本来果たしていた役割である、血液中の老廃物や余分な水分などを体の外に出す働きの代わりをしてくれる何らかの治療が必要です。このような治療を、腎臓の代わりをする治療、ということで「腎代替(じんだいたい)療法」と言います。「腎代替療法」には、「血液透析」や「腹膜透析」などの「透析療法」、もしくは「腎移植」があります。

 

「血液透析」は、腕や首にある血管から、血液を針やカテーテルを使って体外に一旦吸い出し行う治療です。吸い出されれた血液は、チューブの中を流れていき、透析機械まで運ばれます。透析機械にはダイアライザーという血液の浄化装置がありますが、血液がダイアライザーの中を流れる時に、余分な水分や老廃物が捨てられたりミネラルのバランスが整えられます。

 

ダイアライザーを通過してきれいになった血液は、やがてもういちど針やカテーテルを通って、腕や首にある血管から体内へ戻されます。このように、血液を一旦体内から取り出して機械を通して整えることでもともと腎臓が尿を作ることで果たしていた働きの代わりをするわけです。現在、全国で30万人以上の方が血液透析を受けており、その人数は現在も増え続けています。

 

腎臓は、体内の水分の量やミネラルバランスなどを、常にリアルタイムで少しずつ調整する機能を持ってます。いっぽう、血液透析で治療をする場合は、腕や首に針やカテーテルを入れて透析を24時間続けるわけにはいかないので、通常1週間に3回、1回4時間程度かけて治療を行います。つまり腎臓が担当する仕事を、約15分の1程度の時間のなかでギュッと凝縮して行うわけです。当然、血液透析が終わり次の血液透析までの間は、体に余分な水分や老廃物が溜まっていき、ミネラルバランスはくずれていく傾向となります。

 

そこで血液透析と血液透析の間で余分な水分や老廃物が溜まりすぎて体が支障をきたすことがない程度に、食事や水分の摂取を制限する必要があります。そうはいっても完全に食事などで制限することは難しく、血液透析だけで追いつかない分を、さまざまな薬などで補助します。また、そもそも血液透析だけでは、血液を作るホルモンや骨を作るビタミンDの活性化など他の働きの代わりはできないので、これらの働きも注射や飲み薬などで補正をすることとなります。

 

血液透析で長生きするコツは、できるだけ透析と透析の間で余分な水分や老廃物が溜まりすぎないようにすることです。そのためには、食事や水分制限をしっかりしていくことや、透析の時間を長く、回数を多くすることが有効です。その観点から、最近では自宅に透析装置を設置して行う在宅血液透析や、夜間就寝中に6時間以上かけて行うオーバーナイト透析などに注目が集まっています。もともとの腎臓の働きのペースになるべく近づけるということを考えると、非常に理にかなったやり方で、実際その成績は非常に優れています。

 

さて、もう一つの透析療法が腹膜透析です。腹膜透析の腹膜とはなんでしょう。人間のお腹の中には、胃や腸などの消化管が入っているのはご存知かと思います。お腹の皮膚やその下の脂肪、筋肉はお腹の壁で「腹壁」と呼びます。「腹壁」で囲まれた袋状となった空間に腸などが入っているわけですが、その空間を腹腔と言い、また腹腔の内側の表面を覆っているのが「腹膜」です。

 

「腹膜」は、腸や胃の表面がこすれてキズがつかないように、常に「腹水」という潤滑液を少量ずつ出しています。腹膜から出た腹水はずっと出たままでは溜まってしまうので、同時に少しずつ吸収されます。また腹膜は水分を吸収するだけでなく、腎臓と同じようにミネラルや老廃物をしみ込ませたりしみ出したりして交換する機能を持っています。この腹膜の機能を利用して、体内の余分な老体に余分な水分や老廃物を排泄する治療が腹膜透析です。

 

腹膜透析を行うためには、まず、手術でお腹にチューブを入れます。鉛筆くらいの太さの半透明な柔らかいチューブで、お臍の横あたりの皮膚を貫いており、チューブを通してお腹の中(腹膜で包まれている空間で腹腔内と言います)と外がつながるようになっています。体の外に出ているチューブの先端にはキャップがついています。

 

このチューブから透析液という液体を腹腔内に入れます。腹膜透析液は、腹膜から効率的に老廃物や余分な水分をしみ出させたりミネラルを交換できるよう、成分が調整されています。体内から腹膜を介して余分な水分と老廃物が腹膜透析液側に移動したら、腹膜透析液はチューブを通ってお腹の外に出して捨ててしまい、今度はまた新しい腹膜透析液を注入します。一旦入れたら数時間溜めておき1日に3〜4回交換する方法(CAPD)と、寝ている間に器械で透析液を3〜4回自動的に交換する方法(APD)があります。

 

腹膜透析のよいところは、血液透析と違い水分や老廃物を少しずつ体から取り除くことができるため、もともとの腎臓の働きのペースに近く、体への負担や心臓への影響が少ないことです。また病院へ週3回通院せずに済むので、社会生活が送りやすいということもあります。また、血液透析は開始するとわりとすぐに尿が出なくなるのですが、腹膜透析の場合は長期間にわたって尿量が維持されることが多いため、水分摂取制限が少ないという利点もあります。

 

ただし、腹膜透析にはひとつ大きな制限があります。腹膜に本来担当しているわけではない仕事、つまり余分な水分と老廃物をしみ出させる、という役割を、無理矢理させている都合で、長期間続けるとだんだん腹膜が傷んできます。通常、7〜8年続けると腹膜が傷んでくることで、腹膜の機能が落ち、効率が落ちるばかりか、非常に重症の腸閉塞などを起こす原因となってしまいます。るまり、腹膜透析は通常7〜8年そくらい経つと血液透析に切り替えないといけないということです。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME