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尿が臭う、くさい(尿の臭い)

おしっこのにおいの正体は、細菌が尿中の「尿素」を分解してできた「アンモニア」です。尿の臭いが強い場合、「膀胱炎」などの尿路感染症や、「膀胱がん」などの可能性があります。泌尿器科を受診しましょう。また「糖尿病」が重症になると、果物が熟れたような甘い匂いがすることがあります。コーヒーやビタミン剤などを飲んだ後、ニンニクを食べた後などもその匂いが尿に出ることがありますが、これは特に異常ではありません。

こんな病気や状態の可能性があります。

 

尿がにおうわけ

 

おしっこのにおいはくさいでしょうか? 

 

排尿してすぐの尿はほとんど臭いにおいはしないはずです。

でも、掃除がされていない古い公衆トイレなどはくさいにおいがします。これは何故でしょう。

 

尿の中には「尿素」という物質が含まれています。

これ自体はあまりにおいはないのですが、体の外に尿が出た後に雑菌により「尿素」が分解されると「アンモニア」になります。

理科の実験などでアンモニアのにおいを嗅いだことのある方は多いと思います。

鼻にツーンとくる独特のにおいです。これがおしっこがくさい原因なのです。

おしっこが出て放置されているとにおいを放ってくるというわけです。

 

 

一方で、出したばかりのおしっこなのにアンモニア臭がする場合、「膀胱炎」など尿の通り道になんらかの細菌が感染するような病気が隠れている可能性があります。

 

またアンモニア臭以外にも重症の糖尿病では、濃い濃度の尿糖と「ケトン体」という物質が混ざって、果物が熟れすぎた時のような甘い匂いがすることがあります。

 

ちなみに、コーヒーやビタミン剤などを飲んだ後はその匂いが尿に出ることがありますが、これは特に異常ではありません。

ビタミン剤は市販の栄養ドリンクや清涼飲料水などにも含まれていることもあります。

尿の色が濃い、なんだかにおうと思ったけど、そういえばリ○ビタンDを飲んだ、とかないですか?

またアスパラガスを食べた後の尿が臭いと思う人もいるようです。

 

尿がにおう原因① 膀胱炎

 

通常、膀胱の中にある尿は無菌です。

ところが尿の出口から雑菌が侵入して膀胱の粘膜に感染すると「膀胱炎」を起こします。

女性は特に膀胱炎になりやすいと言われます。これは尿道が短く雑菌が膀胱の中に入りやすいためです。

 

ただし、通常の健康状態の方が、おしっこに行きたくなったらすぐにトイレい行くようにしていれば、そう簡単には膀胱炎にはなりません。

多少の雑菌が入っても尿と一緒にまた出てしまうからです。

ところが、ストレスや冷えなどで身体の抵抗力が落ちている時は、膀胱炎を起こしやすくなります。

 

また、おしっこを我慢しすぎると、雑菌が長時間膀胱の中にとどまったり、膀胱の粘膜が伸びすぎて雑菌が入りやすくなることで、「膀胱炎」を起こしやすくなります。

「膀胱炎」になると、膀胱の中の尿中に含まれる「尿素」を細菌が分解して、「アンモニア」を作ります。

すると、出したばかりのおしっこでも臭いがキツくなるわけです。

 

「膀胱炎」は、通常「排尿時痛」や「頻尿」、「残尿感」などの症状を伴います。

ただご高齢の方などは、そのような症状があまり強く出ないことがあります。

「尿の臭いがきつくなった」といって泌尿器科を受診された方が、「膀胱炎」だった、ということも時々経験します。通常は抗菌薬による治療をします。

膀胱炎についてはこちら

 

尿がにおう原因② 膀胱結石

「膀胱結石」は、「前立腺肥大症」や「神経因性膀胱」などの病気が原因となりできる、「尿路結石」の一種です。

うえで挙げたような病気により、尿がしっかり出しきれず古い尿が残りがちになると、尿の中に雑菌が残るようになります。

すると、その雑菌が結石ができやすくなる物質を作るのです。

 

また寝たきりの方なども尿の流れによどみがちになるので「膀胱結石」ができやすくなります。

 

「膀胱結石」は体にとって異物ですので、細菌がつきやすくなり、多くは慢性の「膀胱炎」のような状態となります。

すると通常の「膀胱炎」と同じように尿の臭いがきつくなります。内視鏡による砕石治療をすることが多いです。

膀胱結石についてはこちら

前立腺肥大症についてはこちら

神経因性膀胱についてはこちら

 

尿がにおう原因③ 膀胱がん

「膀胱がん」の方が必ず尿のにおいがきつくなるわけではありません。

また、尿のにおいがきつい方が、膀胱がんである可能性はかなり低いです。

 

ただし一部の「膀胱がん」では表面に結石が付着し、「膀胱結石」や「膀胱炎」の時と同じ理由で、尿の臭いがきつくなることがありえます

また大きな腫瘍の場合は、一部が「壊死」して組織が腐ります。

壊死した組織は当然腐敗臭がするので、それによるにおいの可能性もあります。もちろん、治療が必要です。

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尿がにおう原因④ 尿道カテーテルが入っている

 

「前立腺肥大症」や「神経因性膀胱」がひどくなると、膀胱に尿が溜まっても自分で出せなくなります。

この状態が続くとやがて腎不全となり命を落とす原因にもなりかねません。

そこで、「尿道カテーテル」というおしっこの管を膀胱まで入れ尿を出すようにします。

「尿道カテーテル」は、先端で風船が膨らんで抜けない仕組みになっており、通称「バルーン」と呼ばれます。

前立腺肥大症についてはこちら

神経因性膀胱についてはこちら

 

本来、カテーテルは体にとって異物なのです。異物が体内に入っている状態は、できれば避けたいものです。

よって、身体のことだけを100%考えると、本来は尿が溜まった時にその都度カテーテルを尿道から膀胱へ入れて尿を出し、出し終われば抜く「間欠自己導尿」が望ましいと言えます。

 

ただ、ご高齢であったり手足が不自由であったりすると、必ずしも全員が「間欠自己導尿」ができるわけではなりません。

 

むしろできない人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。施設に入所中で寝たきりの方なども「尿道カテーテル」が留置されています。

入れておかなければ膀胱の中に尿がパンパンに溜まってしまうだけでなく、腎不全になってしまうので仕方がないのです。

 

異物が体内に留置されていると、そこに細菌が付着することはある程度は避けられません。

慢性的に尿が濁った状態となります。

すると、やはり尿がにおう原因となります。

この場合の「尿路感染」は、カテーテルの流れが確保されていて、常に尿が対外へ流れ出るようになっていれば、通常治療の必要はありません。

簡潔自己導尿についてはこちら

 

また「尿道カテーテル」は通常「ハルンバッグ」(ハルンはドイツ語でおしっこのことです)という半透明の2Lくらいたまる集尿バッグに溜められます。

体外に出た尿を数時間ためておくので、そこでもにおいが発生することになります。

このように、尿道カテーテルが入っている方の尿のにおいは、ある程度は仕方のないものです。

ただし、あまりににおいや濁りが強くなると、「膀胱炎」から「急性腎盂腎炎」を起こして熱が出たりするので、抗菌薬で治療をすることもあります。

 

クランベリージュースなどが菌の付着を減らし、カテーテルの詰まりやにおいを軽減すると言われています。

急性腎盂腎炎についてはこちら

 

尿がにおう原因⑤ 糖尿病

 

おしっこが甘い匂いがすると「糖尿病」の可能性がある、と言われることがあります。確かに甘い糖が尿の中に出てくれば匂いも甘くなりそうな気がします。

 

ちなみに尿糖の「糖」とはブドウ糖のことです。「糖」というと砂糖(ショ糖)を思い浮かべる人も多いと思いますが、厳密には少し違います。

砂糖(ショ糖)は体の中で分解されてブドウ糖と果糖になります。

ブドウ糖は、そのまま体内でエネルギー源になります。果糖も、そのままあるいは体内でブドウ糖に変換されてエネルギー源になります。

 

さて、糖尿病は「インスリン」が足りなくなったり、作用が弱くなったりする病気です。

「インスリン」はブドウ糖を細胞に取り込みエネルギー源として利用するために必要なホルモンです。

このホルモンの作用によりブドウ糖が細胞に取り込まれることで血糖値は下がります。

糖尿病では、ブドウ糖を細胞に取り込めなくなった結果、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が上がるというわけです。

 

 

腎臓は血液の濾過装置です。1日に約150L、およそドラム缶1本ぶんの血液が濾過され、尿のもとである原尿が作られます。

原尿には血糖値に応じた糖分も含まれます。水分は体にとって必要な要素ですし、ブドウ糖は大事なエネルギー源です。

そこで、原尿中の水分と糖のほとんどは再吸収され血液の中にもういちど取り込まれます。

 

このようにブドウ糖は再吸収して利用されるため、通常尿の中には10-30mg/dL程度のブドウ糖しか残りません。

ところが、血糖値が上がって180mg/dLを超えると、腎臓がブドウ糖を再吸収しきれなくなり尿に混じって出ていくブドウ糖の量が増え濃度が高くなります。

 

これが「尿に糖がおりた」という状態なのです。

具体的には、一般的な尿試験紙で±で50mg/dL程度、3+だと500mg/dL程度の濃度のブドウ糖が出ていると言われています。

1回のおしっこが400mlとすると、3+の場合ブドウ糖が2gも入っている計算になります。さぞかし甘い匂いがするのでしょうか。。

 

ところが、砂糖は水に溶かしても匂いはしませんよね?ブドウ糖も実は水に溶かしても匂いはしません。

なぜ、糖尿病で尿糖が下りると甘い匂いがするのか。以下のような重症の方以外での理由は、実は私も詳しく知りません。

尿中のなんらかの物質と反応して甘い匂いのする物質に変化するのかもしれません。また時間のある時に詳しく調べてみようと思います。

 

 

糖尿病の方の尿が甘い匂いがする理由は尿糖だけではありません。

重症の糖尿病になると、「インスリン」が十分に働かないことによって、血液中のブドウ糖をうまく細胞に取り込めず、細胞はエネルギー不足になります。

ブドウ糖を利用できなくなった細胞は、代わりに脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。

この分解の過程で、ケトン体という物質が出来ます。ケトン体はやがて尿中に排泄されます。

 

ケトン体は、果物が熟れすぎた時のような甘い匂いがするため、重症の糖尿病の方は、尿が甘い匂いがするというわけです。

ちなみに、糖尿病でなくても、極端な糖質制限食をした場合や、体質的に炭水化物が分解されにくく糖分がうまく利用できない方なども、尿中のケトン体が陽性になることがあります。

 

 

尿がにおう原因⑥ 脱水

腎臓は血液の濾過装置です。日に約150L、およそドラム缶1本ぶんの血液が濾過され、尿のもとである原尿が作られます。

通常でもその99%が体内に再吸収されて実際に作られる尿量は1日1.5L程度です。

 

水分摂取量が極端に少なかったり、下痢や出血などで水分が奪われて脱水状態になることがあります。

腎臓は非常に優れた濾過装置なので、体内の水分量が不足するとそれを感知して、原尿から再吸収する水分の量をさらに増やし、尿の量を減らします。

 

ところが、尿のなかに排泄される老廃物などの物質の量自体は変わらないので、尿が濃くなれば老廃物の濃度も濃くなります。すると、感染がなくても尿の匂いが強くなることがあります。

 

尿がにおう原因⑦ 嗜好品、ビタミン剤

ニンニクやニラを食べると、いくら歯を磨いたりブレ◯ケアを飲んだりしても、吐息や汗、おしっこまでニンニク臭くなる、という経験はあるかもしれません。

これは、「アリシン」という物質が、呼気や汗、尿に混じって出てくるからです。

アスパラガスやアルコール、コーヒーなども尿臭の原因となると言われています。

 

またチョコ◯BBやアリナミ◯Vなどを飲んだ後、おしっこが真っ黄色になって匂いがすることはあるかもしれません。これはビタミンBが尿に混じって出ているからです。

病院でもらう薬でいうと、「メチコバール」などがあります。

 

泌尿器科専門医 石村武志

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