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手が震えて箸が持てません

腎移植をして退院したあと、日常生活に戻ると、以前はなかった指の震えに気づく方が結構な割合でいらっしゃいます。

実はこれは免疫抑制剤によって起こっている「振戦」(しんせん)という副作用なのです。

 

 

免疫抑制剤の中でも、タクロリムス(プログラフ、グラセプター)、シクロスポリン(ネオーラル、サンディミュン)は、神経や脳に対する影響が出ることがあり、そのうちの1つがこの「振戦」(しんせん)です。

他にも、タクロリムス、シクロスポリンの神経や脳に対する影響で、「けいれん」が出たりすることがありますが、これは薬物血中濃度が意図せず異常に上がりすぎた場合です。

同時に血圧が非常に高かった場合などに起こりやすく、通常は滅多に起こりませんのでご安心ください。

いっぽう、手指の震え「振戦」は、普通の投与量や効き具合でも割とよく起こります。むしろ、程度の差はあれ震えが出ない人のほうが少ないくらいだと思います。

ひどい場合だと、腎移植の手術は順調に終わり退院したけど、震えが酷すぎて字が書けない、箸でご飯が食べれない、スマホの操作ができない、などとおっしゃる方もいて、結構やっかいな副作用ではあります。

 

 

ただし、手の震えは腎移植をして退院した後が一番きついことが多いようです。数ヶ月〜1年かけて、徐々にタクロリムス、シクロスポリンの投与量は減っていきます。

腎臓が徐々に体に馴染んでいくため、必要な免疫抑制効果が少しずつ下がっていくのです。そうするとほとんどの方は震えがあまり気にならない程度にマシになります。

 

 

免疫抑制剤の副作用の説明する際には、必ずお伝えするようにしていることがあります。

副作用があったとしても、移植腎を拒絶反応から守るためには非常に大事な薬です。これらの薬がなかった時代の腎移植は、非常に成績が悪く10年経って腎臓が生着している人は半分もいませんでした。

色々な免疫抑制剤の開発によって、現在の腎移植の成績は段違いに良くなっています。副作用がゼロではありませんが、免疫抑制剤がなければ腎移植という医療自体が成り立たちません。

もちろん腎臓を提供してくださったドナーには一番感謝をしないといけないのですが、免疫抑制剤の恩恵にも感謝の気持ちを忘れず、決められた量と時間で服用することが重要です。

 

 

手が震える原因は薬だけではありません。実は、何も病気がない方でも、指をしっかり伸ばすことを意識して手のひらを開いた状態にして動かさずにいると、ごくわずかに指先が左右に揺れているのがわかると思います。

この揺れ幅は個人差があり、ある特定の動きをしようとした時に指や手が大きく震える場合は「本態性振戦」という病気とされます。「本態性振戦」(しんせん)は、緊張するとさらに震えがひどくなることが多いです。

もしかして、もともとこのような素因のある方が震えが出やすいのかなとか考えたこともあります。

それであれば「本態性振戦」の治療薬(βブロッカーという交感神経の働きを鎮める薬)を試すのはどうかと考えたこともあるのですが、交感神経の働きを鎮める薬だけに、心拍数が減ったり血圧が下がったり、もしも喘息持ちの方などは発作が起こりやすくなるなど、体の他の部分にも多少は作用が出る可能性もあります。

生活が送れないほど困っているのでなければ、腎移植のあと1年くらい経って自然とマシになってくるのを待つのが良いかなと思っています。

なかには腎移植をして2〜3年経っても、まだ手が震えるという方もいらっしゃいますが、10〜20年経ってそのようなことを言われることは少ない印象です。

単に慣れてしまって気を遣って言わないようにしてもらっているのかもしれませんが、長期間経過してもまだだいぶ震えるという方がいれば、また教えてください。

 

話は少し変わりますが、手の震えが出る病気として、パーキンソン病という病気の名前を聞いたことがあるかもしれません。

パーキンソン病は、脳神経の病気で、手が震えたり、口をもぐもぐさせたり、歩行が小刻みになったりという症状が出ます。

 

 

胃薬、精神病薬、吐き気止めなどの薬には、「薬剤性パーキンソニズム」といって、パーキンソン病と同じ症状が出る副作用が出ることがあります。

手の震えがだんだんとひどくなったり、震えるだけではなくこわばって動かしにくくなったり、歩幅が小刻みになったりする場合は、もしかしてパーキンソン病か、あるいは「薬剤性パーキンソニズム」の可能性もあるかもしれません。

「薬剤性パーキンソン症候群」はそれほどめずらしくはないので、もしもこのような症状に当てはまる場合は、これらの薬を飲んでないかどうかはチェックする必要があります。

 

 日本移植学会認定医、日本臨床腎移植学会認定医

石村武志

 

 

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