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腎移植マニュアル 7. 腎移植を受けるには ~レシピエント~

腎移植をうけるには

「腎移植」を受ける人のことを「レシピエント」と言います。「日本移植学会のレシピエント適応基準」として、1) 保存期腎不全も含めて末期腎不全であること、2)全身感染症がないこと、3)活動性肝炎がないこと、4)悪性腫瘍がないこと、となっています。やや分かりにくいので噛み砕いて説明します。

1)について、「腎移植」は「腎不全」の治療ですが、「腎不全」にも初期の状態から末期の状態まであります。初期の腎不全であれば、食事療法などでできるだけ自分自身の腎臓の働きが長持ちするようにするのが第一です。「腎移植」は腎臓を提供してくれる人がいて初めて成り立つ治療です。

いくら「腎不全」の状態であって、「腎臓」を提供してくれると言ってくださる方がいたとしても、まだまだ自分自身の腎臓を大事に守っていくべき段階の方に「腎移植」を行ってはいけない、ということです。具体的には、すでに「血液透析」や「腹膜透析」を受けている方、あるいは「血液透析」や「腹膜透析」をしないといけない程度に「腎臓」の働きが悪くなってしまった「末期腎不全」の方のみが、腎移植を受けることができるということです。

 

2)〜4)は、「腎移植」後に「拒絶反応」を起こさないようにするために内服する「免疫抑制剤」が関係します。

 

2)の「全身感染症」としては、例えば「結核」などが挙げられます。「結核」というと昔の病気のように捉えられがちですが、決して完全に根絶された病気ではありません。比較的若年者にも「結核」にかかる方が増えてきています。また「結核」にかかっていても、「免疫」の働きが正常で体の抵抗力が十分ある場合、「結核菌」は体の中にいるが特に何も症状が出ず、気づかずに生活をしていることもあります。

ところが、いったん「腎移植」を受けて免疫抑制剤を飲み始めると、「免疫」の働きが低下して体の抵抗力が落ち、今まで体内に潜んでいた「結核菌」が増えて急激に悪化して生命を脅かすほど重症になることがあります。このような理由で、「腎移植」をする前に「全身感染症」が見つかった場合は、それを治療しないと「腎移植」を受けることができません。

 

3)「活動性肝炎」は、具体的にいうと「B型肝炎」と「C型肝炎」です。いずれもウィルスが原因で起こる肝炎です。「B型肝炎」、「C型肝炎」ともに、通常の免疫の働きがある時は、特に症状は出ず、気づかずに生活をしていることもあります。

ところが先ほど説明した「結核菌」と同じく、いったん「腎移植」を受けて免疫抑制剤を飲み始めると、「免疫」の働きが低下して体の抵抗力が落ち、急激に肝炎が重症化して生命を脅かすほど重症になることがあります。よって、「腎移植」をする前に「活動性肝炎」が見つかった場合は、それを治療しないと「腎移植」を受けることができません。

 

4)「悪性腫瘍」つまり「癌」などの病気と「細菌」や「ウィルス」が、同じように「免疫抑制剤」に関係してくる、と聞くと少し違和感があるかもしれません。わかりやすく説明するとこのようになります。もしも体内に「癌細胞のたね」ができ始めるとすると、通常の「免疫」の働きがある時には、初期の段階でその「癌細胞のたね」は「よそ者」と認識されて「免疫」により攻撃され死んでしまい「癌」の発症が防がれることになります。もしも「癌」の勢いが「免疫」に勝ってしまって、「癌」が発症したとしても、「免疫」の働きがある限り、なるべく進行しないように食い止めようとします。

ところが、いったん「腎移植」を受けて免疫抑制剤を飲み始めると、「免疫」の働きが低下しているために、でき始めた「癌」を食い止める力が弱くなり、進行が早くなることがあります。いくら「腎不全」を「腎移植」で治療しても、「癌」が進行すれば、やがてそれが命取りとなるため、「腎移植」をする前に「悪性腫瘍」が見つかった場合は、それを治療してかつほぼ治ったと言える状況にならないと「腎移植」を受けることができません。

 

以上が、「日本移植学会のレシピエント適応基準」ですが、他にも「腎移植」を受けるためにはいくつか条件があります。

まずは、「腎移植」に耐えられるだけの体力があるかどうか、ということです。長期間透析をされている方や、非常にご高齢の方などは、心臓のや肺の働きが極端に低下していることがあります。「腎移植」の手術は 4〜8時間程度かかる比較的大きな手術です。全身麻酔をかけてこのような手術を受けることに心臓のや肺などの働きが耐えられない場合は、極端な場合手術が原因で命が縮まる可能性もありえるため、「血液透析」や「腹膜透析」をした方がよいこともあります。

次の条件は、「腎移植」のあと、しっかり「免疫抑制剤」を飲むことができるだけの理解力があることです。「免疫抑制剤」を決まった時間に決まった量だけ飲まないと「拒絶反応」が起こり、移植した腎臓は働きを失います。「免疫抑制剤」を飲むことの意味を理解し、しっかり飲むことができる、もしくはご家族がそのようにできる方でないと「腎移植」を受けることは難しいです。

また、「腎移植」の手術の際は、「腎臓」は左右どちらかの「骨盤」に入ります。「腎臓」の「動脈」、「静脈」という血管、「尿管」という尿を運ぶ管を自分自身の「血管」や「膀胱」に縫い合わせるのですが、例えば動脈硬化が非常に進行している方などは、血管が石のように硬くなる「石灰化」を起こしていて、縫い合わせるための針が通らないことがあります。

最後に「組織適合性」があります。他人の「腎臓」がで体内に移植された時に、「免疫」の働きにより「よそ物」と認識されると「拒絶反応」を起こします。「免疫抑制剤」を飲むことで、「免疫」の働きを少し弱めて「よそ物」と認識されにくくして「拒絶反応」を防ぐわけですが、まれに、「免疫抑制剤」を飲んでいても、もらった腎臓に対して非常に強く反応して「よそ物」と認識して「拒絶反応」が起こってしまう場合があります。腎臓を提供してくれる方の細胞に対して、もらう人の「免疫」がどの程度反応するかを、「組織適合性検査」または「クロスマッチ検査」といいます。「クロスマッチ検査」にひっかかると、その程度によっては「腎移植」をしない方がよいことがあります。

また本当は「腎移植」を受けるためにはもっと大事な前提があります。それは「腎移植のために腎臓を提供してくださる方がいるかどうか」ということです。それに関しては次の項目で詳しく説明します。

 

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