メニュー

腎移植マニュアル 10. 組織適合性とは

生体腎移植を希望するレシピエントと腎臓の提供を希望されるドナーの方がいたとします。お二人とも種々の検査で腎移植を行うことができそうだとわかってきました。

 

この段階でさらに調べておくべきことがあります。それが組織適合性です。わかりやすく言うと、提供する腎臓ともらう人の血液の相性のことです。当然、相性がよければ拒絶反応が起こりにくく、相性が悪ければ拒絶反応が起こりやすいと言えます。

 

たとえば血液型も組織適合性の1つといえます。「輸血をしても良い」とされる組み合わせであれば、腎臓を移植する場合の組織適合性は問題ないと判断されます。同じ血液型同士では腎移植は可能ですし、血液型が違っても例えばAB型の人は何型の人から腎臓を貰っても問題ありません。

 

しかしO型の人は同じO型の人からであればそのまま腎臓をもらって移植しても大丈夫ですが、例えばA型の人から腎臓をもらう場合は、そのまま腎移植をすると拒絶反応が起こることがあります。

 

A型の人の赤血球や腎臓の血管にはA型の標識があるのですが、O型の人の血液の中にはこのA型の標識を認識して攻撃する「抗A抗体」という物質がもともとあるからです。

 

抗A抗体を減らすような処置をすれば腎移植は可能となります。そのまま腎移植をすると拒絶反応を起こす危険性があります。この場合、相性が良いか悪いかでいうと、そこまでよいわけではないがしっかり対処をすれば大丈夫といった感じです。

 

先ほど説明したABO式血液型というのは、赤血球や腎臓の血管の表面にある標識の違いで組織適合性が判断されています。

 

同じような標識のなかでも、白血球や腎臓を含む全ての細胞の表面についているものもあり、これをHLAといいます。HLAの型は多くの要素が組み合わさっているため種類が非常にたくさんあり、血液型のようにたまたまA型同士で一緒だったので相性は問題ない、と言う確率は非常に低くなります。

 

ただし血液型とちがって、HLA型が違ってもその違う標識を認識して攻撃する「抗体」は、腎移植をする前から誰もが持っているわけではありません。

 

つまりHLA型が同じになる確率は非常に低いけど、もしも違ったとしても、普通は違う標識に対する抗体を持っていないので、腎移植をしても免疫抑制剤さえ飲んでいれば、拒絶反応を起こす危険性はそれほど高くない、ということになります。

 

ただし、腎移植をする以前に、他人の細胞が体内に入ったことがある人は、その細胞の表面にあった標識を認識して抗体が作られていることがあります。例えば輸血、妊娠、以前の臓器移植などです。そうすると、そのすでに作られていた抗体が原因となり、腎移植をした後に激しい拒絶反応を起こすことがあり、非常に注意が必要です。

 

つまりHLA型から判断する相性としては、型がある程度同じであるにこした事はないが、違っても抗体さえなければ大丈夫ということになります。

 

ただし腎臓をもらう人の血液の中に、すでに抗体がある場合はかなり危険で、非常に激しい拒絶反応を起こすことがあります。

 

腎臓を上げるドナー、もらうレシピエントそれぞれのHLA型を調べる検査が「HLAタイピング」、そしてレシピエントの血液の中に、自分のものと違うHLA型に対する抗体がすでに作られていないかどうかを調べる検査が「クロスマッチ」です。

 

「HLAタイピング」によって調べたHLAの型が似ていれば似ているうほど抗体は作られにくいので、腎移植の成績はよくなると言われています。ただし、全然違っても抗体さえなければ腎移植を受けることはできます。

 

しかし、抗体がすでに作られている場合、つまり「クロスマッチ」が陽性の場合は、この抗体を取り除く処置をしてから腎移植をしないと激しい拒絶反応が起こります。また処置をしたとしても、十分に抗体が減らなかった時は、腎移植をあきめた方が良いこともあるくらいです。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME