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陰嚢水腫

男性で、精巣の周囲に体液がたまり陰嚢が腫れることを、陰嚢水腫といいます。こどもと大人で対処が違います。こどもの場合、自然に治ることもよくあります。小学生にあがるまでに治らなければ手術をすることがあります。大人の場合、必ず治療が必要ではないのですが、あまりに大きく邪魔な場合は針で液体を抜いたり、手術をします。

 

陰嚢水種とは

「玉ぶくろ」のなかには、「キンタマ」が2つ入っています。「キンタマ」は「玉ぶくろ」の中で割と自由に動くものだということは男性なら誰でも知っていると思います。通常、「玉ぶくろ」の中で「キンタマ」の周囲には、ごく少量の液体があります。「キンタマ」が動く時に、「玉ぶくろ」の内側と擦れないよう、潤滑油のような役割を果たしているのです。

 

 

「陰嚢水腫」は、なんらかの異常で、「キンタマ」の周囲にある液体が異常に増えて、「玉ぶくろ」がふくらんだ状態のことです。

 

生まれたての男の子では出生児に見た目ですぐに気づいたり、こどもでは検診で言われたりして気がつきます。

また、大人ではお風呂で体を洗う時などに大きくなってきてることに気がつき、やがてズボンやパンツが履きにくくなったりしてきます。「キンタマが腫れてきた」といって病院に来られる方が多いのですが、このような方のほとんどが「陰嚢水種」です。腫れているのは「キンタマ」ではなく、水のたまった「玉ぶくろ」です。

 

さて、男の子の「キンタマ」は、医学的な正式名称を「精巣」と言います。また「キンタマ」を包んでいる「玉ぶくろ」は「陰嚢(いんのう)」というのが正式名称です。ここではわかりやすくするため、できるだけ「キンタマ」と「玉ぶくろ」を用いています。

 

男の赤ちゃんがお母さんのお腹のなかにいる時の話です。妊娠2ヶ月頃になると男の子になることが決まります。キンタマは、最初は赤ちゃんのお腹の中で出来始めます。そして、だんだんとお腹の下の方に降りてきます。生まれる2か月前くらい前になるとさらに降りてきて、お腹の外である玉ぶくろにおさまるようになるというわけです。

 

お腹には胃袋や腸などの臓器があります。お腹の壁の一番内側には、これらの臓器をすっぽりとおおう「腹膜」という膜があります。「腹膜」は「腹水」という液体を少量ずつ出しては吸収することを繰り返しています。「腹水」もお腹のなかで腸などが擦れないようにする潤滑油の役割をしています。

 

「キンタマ」が「玉ぶくろ」のなかに降りていく時、「腹膜」は一部分が突き出されるように、「キンタマ」を包みながら一緒に伸びていきます。ということは、「キンタマ」が「玉ぶくろ」に降りたばかりの時は、お腹と「玉ぶくろ」の中は、細い「腹膜」の筒で繋がっていることになります。この細い筒状の部分を「腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)」といいます。

 

腹膜症状突起は、生まれてくる頃には自然とふさがっていることが多いのですが、わずかに開いたまま生まれてくる赤ちゃんもいます。そうすると、お腹のなかの「腹水」が「玉ぶくろ」の中に入ってくるので、「陰嚢水腫」になるわけです。単に腹水が溜まっているだけですので、特に痛みもなく、すぐに治療をする必要はありません。

 

昔は陰嚢水種の赤ちゃんの「玉ぶくろ」を針でついて液体を吸い出したりすることもありましたが、お腹の中と繋がっているわけなので、抜いてもすぐにたまります。最近では、少なくとも乳児の間は「陰嚢水種」を治療することはありません。

 

というのも、お腹のなかと「玉ぶくろ」の通り道である「腹膜症状突起」は、2歳くらいまでに自然とふさがります。そうすると「玉ぶくろ」に溜まっていた腹水も自然に吸収されて「陰嚢水種」は自然に治ります。ですので、赤ちゃんの陰嚢水種は、基本的に治療の必要はありません。

 

大人の場合は、基本的に腹膜症状突起は閉じているはずです。しかしなんらかの理由で、「玉ぶくろ」の中に水分が溜まっていき大きく腫れてきます。腫れるといっても通常痛みはなく、だいたいの方が「大きくなりすぎて邪魔だ」とおっしゃいます。またあまりに大きくなりすぎると歩く時に内腿にこすれて皮膚が痛くなったりします。

 

必ずしも治療の必要はないのですが、赤ちゃんのように自然に治ることはないので、希望される方には治療をします。この場合、針で「玉ぶくろ」をついて液体を吸い出したりします。ただ、一度抜いてもまた溜まってくることが多く、すぐに溜まってパンパンになる場合は、手術で治療します。

 

陰嚢水種の症状

・陰嚢(玉ぶくろ)が腫れる
・痛みはない


陰嚢水種の症状は、陰嚢(玉ぶくろ)のなかで、精巣(キンタマ)のまわりに液体がたまることです。ですので、陰嚢は水風船を膨らましたようにパンパンに膨らんだ状態になります。

 

赤ちゃんの陰嚢水種は、お腹の中と細い通り道で繋がっているので、押さえるとしぼむこともあります。ただし、通り道がすでにかなり細くなっていたり塞がりかけてたりすることもあるので、必ずしぼむというわけではありません。

 

大人の陰嚢水種は、通常は押さえてもしぼみません。時間が経つとだんだん大きくなることがあります。大きくなる速度は人によって違います。数年かけて徐々に大きくなることもありますし、急にパンパンに膨らんでくることもあります。

 

なかには、キンタマをぶつけた、のような何らかの外傷や、陰嚢周囲の手術などが原因で生じることもありますが、ほとんどの場合は原因不明です。

 

陰嚢水種の検査、診断

まずは問診や触診などで陰嚢(玉ぶくろ)や精巣(キンタマ)の大きさや硬さ、痛みの有無などを調べます。

 

特に、陰嚢水腫で膨らんだ玉ぶくろの中身は、たくさんたまった液体なので、光を当てることで中が透けるように光を通します。光が透けないということが、中に水以外の何かが詰まっているということです。その場合はまずは鼠径ヘルニア(脱腸)を疑います。

 

赤ちゃんやこどもの場合で痛みも伴う時は、精巣上体炎、精巣捻転、鼠径ヘルニアという病気の可能性もあります。また、まれではありますが、精巣のがんの可能性も考える必要があります。この場合は痛みはないことが多いです。

 

こどもでも大人でも、最も役に立つ検査は「超音波検査」です。ゼリーをつけた検査機械をヌルヌルと押し当てるだけで、腫れた陰嚢の中身が液体なのか、そうでないのかが、すぐにわかります。


陰嚢水種の治療

赤ちゃんやこどもの「陰嚢水種」は、お腹のなかと「玉ぶくろ」の通り道である「腹膜症状突起」が原因です。「腹膜症状突起」は、ほとんどが2歳くらいまでに自然とふさがります。そうすると「玉ぶくろ」に溜まっていた腹水も自然に吸収されて「陰嚢水種」は自然に治ります。ですので、赤ちゃんの陰嚢水種は、基本的に治療の必要はありません。

 

陰嚢水腫を放置しても、基本的にはあまり問題はありません。精巣が圧迫されることで不妊症の原因になる、と言われることもありますが、はっきりしていません。ただし、成長にしたがって気になる子供もいますので、幼稚園にあがるくらいで治らなければ手術をすることもあります。

 

大人の陰嚢水腫も必ずしも治療の必要はありません。かといって、赤ちゃんのように自然に治ることはないので、邪魔になってきたとか、大きすぎて内股とこすれる、という方には治療をします。「玉ぶくろ」の皮膚から針でついて液体を吸い出す、「穿刺吸引」という治療を行うことが多いです。ただ、一度抜いてもまた溜まってくることが多く、すぐに溜まってパンパンになる場合は、手術で治療します。

 

陰嚢水種の予防、注意点

赤ちゃんやこどもの「陰嚢水腫」で、お腹と「玉ぶくろ」の中を繋ぐ「腹膜症状突起」が太いことがあります。すると「腹水」だけではなく、腸などの臓器が「玉ぶくろ」の中に落ち込んでくることがあります。これを「鼠径ヘルニア」と言います。いわゆる「脱腸」です。

 

「鼠径ヘルニア」は元に戻ることもありますが、お腹に力が加わるとまた起こります。場合によっては「腸閉塞」の原因にもなるので、陰嚢水腫」に「鼠径ヘルニア」を伴う場合は手術が必要になります。陰嚢水腫の赤ちゃんやこどもが、泣いた時などに膨らみが増したり、お腹が痛くなったりしていないかは、注意して観察しておく必要があります。

 

泌尿器科専門医 石村武志

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