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腎移植Q&A|腎機能が悪い人は下剤(酸化マグネシウム)を飲んではいけないと聞きましたが?

酸化マグネシウムは緩下剤(便秘の薬)の一種です。習慣性の便秘を引き起こしにくいマイルドな薬で、副作用も少ない良い薬です。腎移植を受けた方のなかでもこの薬を飲んでいる方は多いと思います。ただし、腎機能が低下している方が、通常より多い酸化マグネシウムを長期間摂取すると、高マグネシウム血症が起こるとされており、注意が必要です。

 

腎移植を受けた受けないに関わらず、世の中の人たちで便秘に悩んでいる方は大勢います。成人男性では約2割、女性は4割もの方が便秘と言われています。また腎移植前から糖尿病のある方は、糖尿病性神経症による重度の便秘でお悩みの方も多いと思います。緩下剤(便秘薬)として酸化マグネシウムを内服されている方はよくいらっしゃいます。

酸化マグネシウムの化学式はMgOで、内服するとまず胃酸(HCl)と反応して塩化マグネシウムになります。次に、膵液と反応して、炭酸水素マグネシウムや炭酸マグネシウムになります。腸内で炭酸水素マグネシウムや炭酸マグネシウムの濃度が高くなると、浸透圧の影響で腸管粘膜から水分がしみ出てきて便が柔らかくなります。酸化マグネシウムはこのような働きで便秘を解消するため、浸透圧性下剤のうち塩類下剤に分類されています。

さて、マグネシウムは下剤として上記のように活躍します。いっぽう、身体にとっても非常に大事なミネラル(電解質)です。どのような働きをするのでしょうか。

マグネシウムは、血液などの液体に溶け込むとプラスの電荷を帯びます。同じ電解質のナトリウム(Na)は水に溶けると(食塩は塩化ナトリウム:NaCl)、マグネシウムと同じ陽イオンとなります。ただしナトリウムは一価の陽イオンです。また、カルシウム(Ca)は、マグネシウムと同じ二価の陽イオンとなります。

体内のマグネシウムのうちほとんどは、蛋白質と結合しているか骨に蓄えられています。血液中に溶けているマグネシウムは、1.7~2.6mg/dlとごくわずかです。ところが、このごくわずかなマグネシウムが骨や歯の形成、神経や筋肉の働きに必要不可欠で、多すぎても少なすぎても身体に害を及ぼします。

 

また、マグネシウムは1日約300mgが食事として摂取され、そのうち半分が腸管から吸収されています。逆に腎臓から1/3、便から2/3が排泄されると言われています。したがって、食欲不振によるMgの摂取不足や胃薬の長期服用による吸収障害、嘔吐や下痢、利尿剤によるマグネシウム喪失では低マグネシウム血症が起こります。低マグネシウム血症があるとよく似た陽イオンであるカルシウムやカリウムも低下することが多く、それにより嘔吐や脱力、人格変化、筋肉のけいれんなどが起こり、ひどい時にはけいれん発作が起こります。

マグネシウムは1/3が腎臓で排泄されており、これによりマグネシウムの量がコントロールされていると言われています。よって腎機能が悪い方が、通常より多くマグネシウムを長期間摂取すると、マグネシウムが蓄積していき高マグネシウム血症が起こるとされています。その症状としては、初期には悪心・嘔吐や低血圧、徐脈、筋力低下、全身倦怠感、無気力、やがてひどくなると、筋麻痺、嚥下障害、昏睡、呼吸筋麻痺、血圧低下、心停止なども起こりえます。このように重症になると心停止も起こし得る怖い合併症なので、注意が必要です。

「腎臓の働きが悪い」という目安は、推定糸球体濾過率(eGFR)が30ml/min以下の場合とされます。CKD stageでいうとstage4以上の方です。では、Mgの摂取が多いとはどのような状況でしょうか。便秘薬として「酸化マグネシウム」を飲んでいる場合です。2015年に、酸化マグネシウムが原因の高マグネシウム血症で重篤な副作用が出たと、ニュースで話題にもなったのでご存知の方もいらっしゃるかと思います。

 

「日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」


通常は 、eGFRが20ml/min以上あれば、よほど長期間でない限り問題となることは少ないとされます。eGFRが20ml/minというと、だいたいクレアチニン値(Cr)は、男性で3.0mg/dL以上、女性で2.5mg/dL以上くらいが目安です。また血清マグネシウム の正常値は1.7~2.6mg/dlですが、4.8mg/dL 以上にならないと症状が出ないとも言われていますので、少しでも腎機能が悪い方が絶対に内服してはいけない薬というわけではありません。

ただし、高齢の方ではこれより低いクレアチニン値でもeGFRが20ml/minになりえます。詳細な数値はこ自身の採血データをご参照ください。また、便秘の方の場合はマグネシウムが上昇しやすいとも言われています。当然この薬を内服される方は便秘なわけなので、もちろん漫然と長期に服用することは避けるべきかと思います。

 

酸化マグネシウムは他の便秘薬とは異なり、繰り返す使用で効果が落ちにくい薬です。また、胃酸と反応して塩化マグネシウムになることで、制酸剤として胃炎や胃潰瘍の予防になったり、腸内環境を整えることができます。

また、この薬を長期に内服することによって腎機能が悪くなる。というわけではありません。よほど腎機能が悪い場合は避けるべきかと思いますが、副作用が比較的少ないよい薬なので、過敏になりすぎて無用に避ける必要はないと思います。

ちなみに、高マグネシウム血症とは関係ありませんが、マグネシウムと一緒に内服すると効果が弱まってしまう薬があると言われています。ミノマイシンに代表されるテトラサイクリン系抗生物質、クラビット(レボフロキサシン)に代表されるニューキノロン系抗菌剤などです。また、特に腎移植患者さまで注意が必要なのは、セルセプト(ミコフェノール酸モフェチル)で、これもマグネシウムと一緒に服用することで吸収が悪くなり効果が落ちてしまいます。

腎移植患者さまが酸化マグネシウムを飲む場合、寝る前にしておけば大丈夫でしょう。もしも毎食後飲む必要があるようなら、少し面倒臭いですがセルセプトと酸化マグネシウムは1時間以上ずらすのがよいかもしれません。

 

日本移植学会・日本臨床腎移植学会 認定医

石村武志

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