メニュー

急性腎盂腎炎(腎盂腎炎)

急性腎盂腎炎(腎盂腎炎、腎盂炎)は、尿を作っている腎臓のなかで、腎盂(じんう)という尿をためておく部分に細菌が感染し、発熱や背中の痛みが出る病気です。女性に多く、こじらせると菌が全身にまわり重症化することもあります。抗菌薬の飲み薬や点滴で治療をします。

 

目次

 

急性腎盂腎炎とは

若い女性で、「風邪の症状はないのに、急に高い熱が出た」という場合は、「急性腎盂腎炎」かもしれません。

 

もちろん男性も「急性腎盂腎炎」になることはありますが、女性に多い病気です。

 

「そういえば最近疲れ気味で、何となく尿をした後に違和感や残尿感があったな」と思っていた。すると、引き続き高い熱が出て、左右のどちらかの腰に重だるい痛みが出てきた、、こうなると、これはほぼ間違いなく「急性腎盂腎炎」です。

 

 

ちなみに、「腎盂腎炎」や「腎盂炎」と呼ばれることもありますが、これらはほぼ「急性腎盂腎炎」と同じ意味です。

 

 

泌尿器科はやっぱり受診しにくいイメージがあるんでしょうか。熱が出てから数日経ってから受診されるかたが多い印象です。特に痛い検査や恥ずかしい検査等はありません。しかも抗菌薬の点滴や飲み薬で治ることがほとんどです。

 

早く治療をすれば比較的簡単に治る病気ですが、こじらせると入院が必要になったりします。場合によったら命に関わる状況にもなりかねません。以下の説明を読んで、「自分は急性腎盂腎炎かもしれない」と思ったかたは、迷わず早めに泌尿器科を受診しましょう。

 

 

さて、「急性腎盂腎炎」といいますが、そもそも「腎盂」とは何でしょう? そのまえにまず「腎臓」の説明をします。「腎臓」とは、左右の腰のあたりにある握りこぶしくらいの大きさの臓器です。

 

 

「腎臓」は、血液中の老廃物や余分な水分を「尿」として体の外に出す働きがあります。「腎臓」は2つの部分からできています。

 

1つは中身が詰まったいわば「実」の部分で、「腎実質(じんじっしつ)」といいます。「腎実質」では主に尿が作られています。またもう1つは、「腎実質」で作られた尿を溜めておく袋状の部分ですが、これが「腎盂(じんう)」です。

 

 

「腎盂」に一旦溜まった尿は、次に「尿管」という細い管を通ってお腹の下まで流れていき、「膀胱」に貯められます。通常、「膀胱」に尿が200〜400mlくらい溜まると、「おしっこがしたい」と感じてトイレに行き、「尿道」を通って尿が排泄されます。

 

尿の出口から細菌が「尿道」へ入り「膀胱」に感染すると、「膀胱炎」になりますが、この細菌がさらに「尿管」をさかのぼって「腎盂」に感染すると「急性腎盂腎炎」となり、発熱や腰痛などの症状が出ます。

 

 

膀胱炎についてはこちら

 

女性は「尿道」が短く、「膀胱炎」を起こしやすいため「腎盂腎炎」にもなりやすいと言われています。また男性でも、もともと「前立腺肥大症」があるために普段から尿が出にくかったり、全て出し切れていない方は「急性腎盂腎炎」になりやすいことがあります。

 

前立腺肥大症についてはこちら

 

また、男女に関係なく「糖尿病」などの基礎疾患があると、細菌に対する身体の抵抗力が弱いため、「腎盂腎炎」かかりやすいです。「腎結石」、「尿管結石」などの結石を持っている方も、結石についていた細菌が原因で「腎盂腎炎」になりやすいと言えます。

 

腎結石についてはこちら

尿管結石ついてはこちら

 

「急性腎盂腎炎」の多くは抗菌薬の飲み薬あるいは点滴で治りますが、細菌が血流に乗って全身に広がってしまうと、命に関わるほど重症化し「敗血症」を引き起こす場合もありますので早めの受診が重要です。

 

腎盂腎炎の症状

 

☑︎ 排尿時痛、頻尿、残尿感

☑︎ 発熱、悪寒

☑︎ 左右どちらかの腰の痛み

 

「急性腎盂腎炎」の多くは「膀胱炎」から引き続いて起こります。その場合は、まず排尿中や排尿後に、「尿道」や「膀胱」(下腹部)が痛む「排尿時痛」や、何度も尿に行きたくなる「頻尿」、排尿したあともまだ出そうな感じがする「残尿感」、尿の色が赤くなる「血尿」、尿の濁りが強くなる「尿混濁」などの症状が出ます。

 

          

 

その後、背中や腰の痛みである「腰背部痛」、高熱が出る前の寒気や震え「悪寒」「発熱」、全身のだるさである「倦怠感」などが出てきます。

 

 

人によっては「排尿時痛」などの排尿症状と「発熱」や「腰背部痛」がほぼ同時に出る方もいます。また「排尿時痛」などの排尿症状は出ないか非常に軽く、「発熱」だけ、あるいは「発熱」と「腰背部痛」だけが出るというかたもいます。

 

いずれにしても、喉の痛みや咳など、いわゆる風邪の症状はないのに高熱が出るのが特徴です。内科を受診すると「腎盂腎炎」だったため、泌尿器科を紹介された、ということもよくあります。

 

「急性腎盂腎炎」の発熱は夜になると出やすく、比較的高熱になるのも特徴です。

 

 

「急性腎盂腎炎」の「腰背部痛」は、ぎっくり腰や背骨やそのまわりの筋肉からくるような、いわゆる普通の「腰痛」とは少し違った痛みです。

 

腰と背中の横の方が重だるい感じと表現される方ことが多く、左右どちらか片側のことがほとんどですがまれに両側のこともあります。いわゆる普通の「腰痛」が、動いた時に痛んだり、一定の姿勢をした時に痛むのと違って、「急性腎盂腎炎」の「腰背部痛」は、どんな姿勢をしていてもシクシクと常に痛み、こぶしで叩くと痛みが響くという特徴があります。

 

注意!

 

「急性腎盂腎炎」の「発熱」は38度以上の高熱のことが多く、ご高齢の方などは脱水症状から意識障害などを生じることもあります。

 

 

「急性腎盂腎炎」は、こじらせると全身の血液に細菌がまわり「敗血症」となり、血圧が下がってショック状態となる「敗血症性ショック」を引きこすこともあります。

 

その場合は、「悪寒旋律」(おかんせんりつ)と言って、止めようと思っても止まらない非常に強い震えが出たり、気分が悪くなったり意識がなくなったりします。ご高齢の方などでは命に関わる状態となることもあり注意が必要です。

 

腎盂腎炎の検査、診断 

 

問診で上記のような症状があれば「急性腎盂腎炎」を疑い、背中をこぶしで軽く叩くことで痛みが響くかどうかを調べます。もし痛みが響くようであれば「急性腎盂腎炎」の可能性は高いと言えます。

 

「急性腎盂腎炎」は細菌が感染することで起こる病気ですので、「尿検査」を提出してもらい、尿の中に白血球や細菌がいるかどうかを顕微鏡で調べます。

 

ほとんどの場合は以上で診断がつきますが、「尿検査」のために提出していただいた尿の一部を「尿培養」で詳しく調べて細菌の種類を特定し治療の参考にします。

 

「超音波検査(エコー)」で「腎臓」自体が大きく腫れていないか、また「腎盂」に尿がたまり「水腎症」になってないか、「尿管結石」や「前立腺肥大症」が「腎盂腎炎」の原因となっていないかどうかを調べることもあります。

 

 

また、熱が高く重症化が疑われる場合は、「血液検査」で炎症反応や腎機能を確認した方が安心です。

 

 

「水腎症」、「尿管結石」などが疑われる場合は、「腎盂尿管造影」というレントゲン検査や「CT検査」を行うこともあります。

 

腎盂腎炎の治療

「急性腎盂腎炎」の治療は、原因となっている細菌に対する抗菌薬を投与することです。抗菌薬は、飲み薬もしくは点滴です。飲み薬で治療するか、点滴で治療するかは、発熱の程度や全身の状態、年齢や採血結果などをもとに決めます。いずれにしても、早期に治療を開始することが大切です。

 

 

また、抗菌薬により「発熱」や「腰背部痛」が治ってきても、抗菌薬を2週間続ける必要があると言われています。抗菌薬の点滴で治療を開始した場合でも、だいたいは途中で飲み薬の抗菌薬に変更します。その場合も点滴と飲み薬で合計2週間の治療が必要です。

 

非常に重症で脱水症状を伴っている場合は、水分や電解質補給のための点滴をすることもあります。

 

 

腎盂腎炎の予防と注意点 

「糖尿病」や「前立腺肥大症」、「尿管結石」などの基礎疾患がある場合は「腎盂腎炎」になりやすいので注意が必要です。

 

またそのような基礎疾患がなくても、「膀胱炎」や「腎盂腎炎」を繰り返す方がいらっしゃいます。普段から、尿を我慢しない、過労などで体力が落ちないよう気をつける、お腹や足が冷えないように気をつけることなどが重要です。

 

「腎盂腎炎」になり治療を受けている場合は、熱が下がったり痛みが引いたとしても、しっかり点滴をするために通院することや、処方された薬を決められた期間服用することが重要です。

 

 

泌尿器科専門医 石村武志

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME