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検診で尿蛋白を指摘された

「蛋白」は、人間が生きていくためにはとても大事なものです。血液中にも、「蛋白」はたくさん含まれています。血液が「腎臓」を通過する際に、尿のなかに漏れ出てしまった蛋白が「尿蛋白」です。「腎臓」は、血液を濾過して尿を作る小さなフィルター装置の集まりです。正常な場合、「蛋白」はフィルター装置を通過しないため、ごく少量しか尿の中には出ません。しかし、「腎炎」などの病気で、フィルターの網目が壊れると、尿の中に漏れて出る「蛋白」の量が増えてしまうのです。ただし、健康な方でも軽度の蛋白尿が出ることはあります。

 

 

蛋白尿はどこから出る?

腎臓とは

「腎臓」は、体の中で背骨の左右に1つずつあり、大きさは握りこぶしくらいでソラマメに似た形をしています。「腎臓」は、尿をつくる臓器です。言い方を変えると、「腎臓」は体に溜まった血液中の老廃物や余分な水分や塩分を、尿として体の外へ出す働きを持っています。

「腎臓」の中でも尿を作っている中身の詰まった、いわば「実」の部分を「腎実質」と言います。「腎実質」には「毛細血管」、「糸球体(しきゅうたい)」、「尿細管(にょうさいかん)」という、細かい管がぎゅっと詰まっています。

 

糸球体とは

「腎臓」には非常にたくさんの血液が流れ込んでいます。そして血液は「腎臓」の中で「毛細血管」の中を流れて分かれていき、「糸球体」に入ります。1つの腎臓には100万個の糸球体があると言われています。「糸球体」の働きは、まず最初に血液から、”ざっくり”と老廃物や水分を抜き取る「フィルター装置」のようなものです。

老廃物や水分を抜き取られた血液は「糸球体」から出ていくいっぽう、「糸球体」で濾過された水分や老廃物は、「尿のもと」として「尿細管」に流れていきます。1日に150L以上の「尿のもと」が作られると言われます。この「尿のもと」の中にはもちろん老廃物も含まれますが、本当は必要だった水分やミネラルなども含まれてしまっています。「糸球体」は”ざっくり”とした濾過装置なのです。

 

尿細管とは

そこで「尿のもと」から不要な老廃物などをより分けて、本当に必要なものは血液の中に戻す装置が必要です。それが「尿細管」です。「尿のもと」が「尿細管」のなかを流れていく途中で、体にとって必要な栄養やミネラル、水分などが再吸収されてもういちど血液のなかに戻されます。

「尿細管」でミネラル、水分が再吸収されてだいぶ濃くなった「尿のもと」は、「尿細管」からやがて「集合管」へ流れていきます。「集合管」では、必要に応じてさらに必要に応じて水分が再吸収されて「尿のもと」は濃くなり、やがて最終的に「尿」となります。

「尿細管」や「集合管」で再吸収されるミネラルや水分の量は、ホルモンで微調整されており、体内の水分量やミネラル、酸性・アルカリ性のバランスが一定となるような仕組みになっています。

 

尿路とは

「腎臓」には、尿を作る「腎実質」と、尿を溜めておく「腎盂」があります。「腎実質」で作られた尿は、「腎盂(じんう)」に一旦たまります。その後、「尿管」という細い管の中を流れて、下腹部にある「膀胱」にたまります。そして膀胱にたくさん尿がたまると尿意を感じて、尿は「尿道」を通って排尿されるのです。

 

蛋白尿の原因

「蛋白」は、人間の体を作り上げる非常に大事な物質です。髪の毛、皮膚、内臓、筋肉、、あらゆる臓器に蛋白が含まれます。また「蛋白」には色々な種類のものがあり、それぞれに働きが違います。これらの「蛋白」は、血液の中を通って色々な臓器や組織に運ばれています。

フィルター装置である「糸球体」を通って濾過される血液の量は、上で説明した通り1日150L以上になります。この際、血液の中の「蛋白」はほとんどがフィルターの網目をほとんど通ることなく、そのまま糸球体を通りぬけ血液中にとどまります。「腎炎」や「糖尿病性腎症」などで、この「糸球体」のフィルターの網目が傷つくと、尿の中に「蛋白」が漏れ出るため、「尿蛋白」となるわけです。

 

また、「糸球体」で濾過された尿に、もともとは「蛋白」が入っていなくても、尿の通り道である「尿管」や「膀胱」などが炎症を起こしていたり、出血していても、そこから「蛋白」が漏れ出て「蛋白尿」の原因になります。

 

蛋白尿の種類

検診などで、「尿にタンパクがおりてます」、「蛋白尿が出ています」、と言われた場合、原因として以下のようなものが考えられます。注目して欲しいのは、全てが病気ではないということです。

また、病気の中でも、腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、高血圧性腎症(腎硬化症)などは、まさに「蛋白尿」が出ていること自体が問題の病気です。これらの病気の「蛋白尿」は、主に「糸球体」から出ています。また、病気を治療する上で「蛋白尿」が増えたか減ったかが大事となる病気です。「腎臓内科」で担当します。

いっぽう、腎結石、尿管結石、膀胱癌、腎盂尿管癌、膀胱炎などの病気は、あくまで「炎症」や「腫瘍」、「感染」などにより、「尿路」から出ている「蛋白」がたまたま検査で引っかかった、というニュアンスです。結果として「蛋白尿」にはなっていますが、病気の主体とはあまり関係ありません。これらの病気は通常、「泌尿器科」で担当します。

 

蛋白尿の精密検査って?

検診で行われる尿検査では、蛋白尿は通常テステープという試験紙の微妙な色の違いで判定します。黄色い部分がほとんど変わらず黄色なら(-)、わずかに緑味を帯びたら(±)、以降段階的に緑の色が濃くなっていけば(+)、(++)、(+++)、(++++)、とプラスの数が多いほど、濃い蛋白尿が出ているということになります。(±)で要精査となり、医療機関の受診を勧められます。

さて、検診結果を持って医療機関を受診したら、まず何をするのでしょうか。担当医は、尿検査の異常が「蛋白尿」だけなのか、あるいは「尿潜血」でも異常が出ているのか、あるいは採血検査をしていれば何か異常は出ていないかを確認します。そして、ほとんどの場合、尿検査を再検査します。再検査の結果に応じて、さらに詳しく尿を調べる検査や採血検査をしたり、超音波検査で腎臓を調べたりします。それらの結果に応じて、以下のいずれに当てはまるかを判断します。

 

病気ではない蛋白尿の原因

① 一過性蛋白尿(発熱、運動後、ストレス、射精後、月経中)

検尿で尿蛋白陽性と言われても、必ず病気が原因とは限りません。特に若い方では、大半の方が医療機関を受診して再検査をすると陰性になっていたります。これを一過性蛋白尿といいます。風邪などによる発熱、激しい運動、ストレス、脱水などによって起こります。また、男性の場合は尿を採取する前夜に射精をすると精液が尿に混ざり、偽陽性となることがあります。女性では、月経中には経血が尿に混ざり偽陽性となることがあります。いずれも再検した際には陰性となっているはずなので、その場合は特に治療の必要はありません。

 

②起立性蛋白尿

長時間立っていると蛋白尿が出るが、寝ているときは出ないという人があります。これを「起立性蛋白尿」といいます。痩せ型の若い方によくみられます。「起立性蛋白尿」が疑われる場合、前日の夜に必ず排尿してから就寝し、翌朝の一番の尿を採取した「早朝尿」を調べます。「早朝尿」で「蛋白尿」が陰性であれば、「起立性蛋白尿」と確定できるので、これも特に治療の必要はありません。

 

蛋白尿の原因となる病気

③腎炎

検診での尿検査は、主にこの「腎炎」と呼ばれる病気を見つけるために行われています。「腎炎」というのは、色々な病気をまとめて呼ぶ病気の名前です。例えば、「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」、「ANCA関連腎炎」、「抗糸球体基底膜腎炎」、「ループス腎炎」、「IgA腎症」、「膜性腎症」、「微小変化型ネフローゼ症候群」、「原発性巣状分節状糸球体硬化症」などがあります。

これらの病気は、全て「腎不全」を引き起こす可能性のある病気です。主に、腎臓内科が担当します。腎炎の種類によって、数日〜数ヶ月で急に腎臓の働きが悪くなり、発熱やむくみが出るものや、数ヶ月〜数年の経過でゆっくりと腎臓の働きが悪くなるため、進行するまで自分では何も気づかないものがあります。

検診での「蛋白尿」の場合、ゆっくり進行して自分であまり気づかない病気を見つかることが多いです。早期に発見されて適切な治療を受ければ、腎不全が進行する確率を減らしたり、時期を送らせたりすることが可能です。

 

④慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(CKD)は、「CKD」は、「Chronic Kidney Disease;慢性腎臓病」の頭文字をとったものです。慢性に経過する、つまりゆっくりと進む腎臓の病気を、全てまとめて「CKD」と呼びます。具体的には、血液検査でわかる腎臓の働きが、健康な人の60%以下に低下するか、蛋白尿が出ている状態が3ヶ月以上続けば「CKD」です。つまり、「CKD」自体が病気の名前ではあるのですが、「CKD」にはその元となる病気というものが存在します。

具体的には「糖尿病性腎症」や「高血圧性腎硬化症」などが該当します。また上記の「腎炎」のうち慢性の経過を辿るものも「CKD」に該当します。また「生活習慣病」のように病気ではなくても、「喫煙」や「肥満」、「過度の飲酒」や「ストレス」などの「生活習慣」そのものが「CKD」の原因となることもあります。

CKDについてはこちら

 

⑤多発性嚢胞腎

「嚢胞」というのは、水がたまった袋のことです。健康な人でも「嚢胞」が1つか2つ腎臓にできることはありますが、これは特に治療を必要とするものではありません。ところが、嚢胞が腎臓に非常にたくさん出来すぎて、正常な腎臓の組織が減ってしまう病気があります。

これは「多発性嚢胞腎」という病気で、遺伝が関係しています。60歳くらいまでに、約半数の方が末期腎不全にいたり、透析療法や人移植が必要となります。また「多発性嚢胞腎」の方は、肝臓にも嚢胞ができてお腹が張ってきたり、脳動脈瘤を合併していることもあります。

 

⑥尿路結石(尿管結石など)

腎臓で出来た「石」のことを「腎結石」といいます。この「腎結石」が尿と一緒に「尿管」の中に流れてきて落ち込むと、「尿管結石」と呼ばれるようになります。「尿管」はかなり細い管ですので、落ちてきた結石が「尿管」の中でこすれたり、詰まってしまうことがあります。こうなると、左右どちらかの腰や背中、下腹部に激しい痛みが出たり、血尿が出たりします。また、膀胱に出来る石が「膀胱結石」です。同じく膀胱粘膜がこすれて血尿が出ることがあります。

血液の中には「蛋白」が含まれるので、これらの病気で「血尿」が出ているときには、「尿蛋白」も陽性になっていることが多いです。

尿管結石についてはこちら

 

⑦尿路上皮がん(膀胱癌など)

「膀胱がん」、「腎盂尿管がん」などの「尿路上皮がん」も腫瘍の表面から出血をして血尿が出ることがあります。血液の中には「蛋白」が含まれるので、これらの病気で「血尿」が出ているときには、「尿蛋白」も陽性になっていることが多いです。また腫瘍の組織は脆く壊れやすいので、細胞が壊れて出てくる「蛋白」も「蛋白尿」の原因になります。

膀胱がんについてはこちら

腎盂尿管がんについてはこちら

 

⑧尿路感染症(膀胱炎など)

「膀胱炎」や「急性腎盂腎炎」などの「尿路感染症」では、「尿路上皮」に炎症が起こります。炎症を起こした上皮は出血して血尿が出ることもあります。また、このような上皮は壊れやすいので、細胞が壊れて出てくる「蛋白」も「蛋白尿」の原因になります。

膀胱炎についてはこちら

 

泌尿器科専門医 石村武志

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