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腹圧性尿失禁

咳をしたり重いものを持ち上げたりして、おなかに力が入った時に尿が漏れてしまうことを、腹圧性尿失禁(ふくあつせい にょうしっきん)と言います。骨盤底筋体操や干渉低周波装置などで、緩んだ括約筋や骨盤底筋を鍛えることで改善します。また膀胱の出口の締まりをよくする薬が効くこともあります。

 

目次

 

腹圧性尿失禁とは

本人の意思とは無関係に尿が出てしまう、つまり「尿もれ」のことを「尿失禁」といいます。人に言いにくい症状でもあり、その実態はよく知られてきませんでした。しかし最近になり、実は「尿失禁」でお困りの方は、成人女性の約半数近くいらっしゃることがわかってきました。

男性では尿を我慢する筋肉が比較的強いこともあり、尿もれは女性に多い悩みです。ご高齢の女性は全身の筋肉の力が徐々に弱くなるので尿もれが起こりやすくなります。しかし、若い女性でも、妊娠中や特にお子様を出産した後などは、お産による筋肉の損傷などでもれが起こりやすくなります。人により程度は様々ですし、生命に関わるような重大な病気ではないため、ついそのままにしてしまうことも多いのですが、生活をするうえで非常に困った病気です。なんとかしたいものです。

「尿失禁」にはいくつかのタイプがあります。ひとつめは、急に強い尿意を感じてトイレに行くまでに間に合わずに漏れてしまう、というタイプで「切迫性尿失禁」といいます。「切迫性尿失禁」は、最近では「過活動膀胱」の症状のひとつとしても知られてきました。

「過活動膀胱」は別項目で詳しく説明しますが、「尿が近い」、「急に尿意を催す」、「間に合わずに漏れてしまう」などの症状がある状態のことです。つまり実際に漏れるか漏れないかに関わらず、漏れそうになってトイレに駆け込むような症状がある場合は「過活動膀胱」と呼び、そのような方のなかで実際に漏れてしまう場合を「切迫性尿失禁」と言うわけです。

過活動膀胱についてはこちら

 

そしてもうひとつのタイプが、咳をしたり重いものを持ち上げようとしりして、おなかに力が入った時に漏れてしまう失禁で、「腹圧性尿失禁」と言います。尿もれの8割が「腹圧性尿失禁」で4割が「切迫性尿失禁」といわれています。8割と4割で足して10割になってないではないか、とお思いかもしれません。両方の尿失禁が重なって起こっているかたもいらっしゃるからです。

「腹圧性尿失禁」は、「膀胱」の出口にある「括約筋」という尿を止めるバルブのような筋肉の締まりが弱くなることで、お腹に力が加わって膀胱が押された時に、バルブを締める力が圧力に負けて尿が押し出されて起こります。

 

 

男性ではこの「括約筋」の力が割と強いことと「前立腺」があることでさらに尿を止める力が強くなるため「腹圧性尿失禁」があまり起こりません。つまり「腹圧性尿失禁」は、女性の病気といえます。

 

「括約筋」は、骨盤の底にあって「膀胱」や「子宮」などを支えている「骨盤底筋」という筋肉と連動しています。過去の出産経験や閉経などで「骨盤底筋」はダメージを受けたり弱くなったりします。

 

したがって、お子さんを何人も出産した女性やご高齢の女性は、「腹圧性尿失禁」が生じやすくなります。

 

また喘息持ちの方など、普段から咳をよくする方や、便秘がちでよくきばる方、重い荷物を持つことの多い方、肥満体型の方なども、腹圧がかかりやすく「腹圧性尿失禁」になりやすいといわれています。

 

腹圧性尿失禁の症状

典型的な「腹圧性尿失禁」の症状は、立ち上がろうと踏ん張ったり、咳やくしゃみをしたり、重いものを持ち上げようとしたりした時など、つまりおなかに力が入った時に、尿がチビって漏れてしまうことです。

 

軽くチビるだけのこともあれば、それがきっかけで勢いがついてかなりの量が漏れてしまうこともあります。「腹圧性尿失禁」で困ってらっしゃる方のほとんどは女性ですが、「前立腺癌」の治療で「前立腺」を摘出した場合などは男性にも起こります。

 

いっぽう同じ「尿漏れ」でも、急に強い尿意をもよおして、トイレに急いでいこうとしても間に合わずに漏れてしまうよう場合は、「切迫性尿失禁」といいます。「腹圧性尿失禁」、「切迫性尿失禁」の両方の要素が重なって「尿失禁」が起こっている人も珍しくありません。このような場合を「混合性尿失禁」と呼んだりしますが、厳密に区別することは難しいことも多く、両者に対する治療が必要になります。

 

腹圧性尿失禁の検査、診断

腹圧性尿失禁の診断のためには、問診、排尿日誌、尿検査、超音波検査、パッドテストなどを行います。

 

まず問診で、妊娠・出産経験があるか、持病がないか、などをお聞きします。そして、1日の尿回数、飲水量、1回の排尿量、失禁回数、などについての「排尿日誌」を記載してもらいます。、尿失禁が起こる時の状況やきっかけなどをお聞きします。

 

「膀胱炎」などが原因で一時的に尿失禁が起こっているだけこともあるので「尿検査」を提出してもらい尿を顕微鏡で詳しく調べます。

 

 

尿漏れだけでなく、排尿してもしっかりと尿が出しきれていなくて、排尿後に膀胱内に「残尿」が残っていることもあるので、「超音波(エコー)検査」で調べます。これらの問診や検査で、尿失禁のタイプが「切迫性尿失禁」なのか、「腹圧性尿失禁」なのか、あるいは両方の要素があるのかがわかります。

 

また「腹圧性尿失禁」の程度を調べるために「パッドテスト」と言う検査があります。

この検査は次のように行います。尿漏れパッドを新しく当てて水を500ml飲みます。歩いたり咳をしたり椅子から立ち上がったりという、決まった動作を1時間かけてします。最後に尿漏れパッドの重さを測って終わりです。パッドの重さが2g以上増えれば尿失禁ありと判断されます。50g以上なら重症とされます。

 

腹圧性尿失禁の治療

1.骨盤底筋体操、干渉低周波装置

お腹に力が入った時にもれてしまう「腹圧性尿失禁」は、過去の出産経験や加齢などによって、膀胱や子宮を支えている「骨盤底筋」という筋肉の力が弱くなることで起こります。

この「骨盤底筋」をリハビリで鍛える「骨盤底筋体操」という体操は非常に有名で、軽症の場合はこれだけで治ってしまうこともあります。仰向けに寝転がったり、椅子に座った状態で、全身をリラックスさせて、肛門や尿道・膣だけを5秒間強くしめて、ゆっくりゆるめることを10回繰り返します。これを1日に3〜4回行います。

 

 

少々コツが入りますが、わかりやすく言うと、例えば出始めた尿を途中で止めようとするときにする動き、あるいはオナラを我慢するときの動きです。

骨盤底筋体操についてはこちら

 

腹筋や腕立て伏せをしてもすぐに筋肉がつくわけでなく継続が重要なのと一緒で、この「骨盤底筋体操」も、最低3ヶ月は根気よく毎日続けることにより少しずつ効果が出てきます。すぐに効果が出ないので途中でやめてしまう人が多いのですが、本当にしっかり続けた場合は、半分以上の方で「腹圧性尿失禁」がよくなると言われています。

2. 干渉低周波治療、磁気治療

根気が続かない人のために、「骨盤底筋」を「干渉低周波装置」や「磁気刺激装置」で刺激して動かし、鍛える方法もあります。

しかし、「腹圧性尿失禁」を改善させるために最も有効なことは体重を減らすことです。特に肥満体型の方がダイエットをすることで「腹圧性尿失禁」が劇的に改善することはよくあります。なかなか難しいですがトライしてみる価値はあると言えるでしょう。

干渉低周波治療器についてはこちら

 

2.薬物療法

「膀胱」の出口の締まりが弱いことが原因で、「膀胱」が周囲から押されると尿が押し出されて漏れてしまうのが「腹圧性尿失禁」です。そこで、膀胱の出口を締める作用のある飲み薬が効くことがあります。このような薬を飲むと、副作用としてごく一部の方に、手指のふるえや動悸、頭痛、吐き気などが出ることがありますので、そのような場合は内服を中止します。

 

3.手術療法

軽い「腹圧性尿失禁」なら上記の治療で治ることもありますが、ある程度の「腹圧性尿失禁」をしっかり治すには、手術が最も有効です。

 

 

手術療法には、ポリプロピレンという刺激の少ない材料で作ったメッシュを体内に埋め込み、尿道を裏側からハンモック状に釣り上げることで膀胱の出口を安定させて尿もれを改善する「TVT手術」や「TOT手術」があります。いずれの方法も下半身麻酔で、15~30分程度で終わります。入院も数日程度で、90%近い方で尿パッドが不要になるほど効果の高い手術です。かなりひどい「腹圧性尿失禁」で日常生活が制限されて悩んでいるかたは、思い切って手術を考えてみるのがよいでしょう。

 

ただし、「TVT手術」や「TOT手術」には、膀胱損傷や出血などの合併症があります。非常に熟練した術者が行う場合には極めて稀と思うので、そのような施設を選ぶことが重要です。

 

泌尿器科専門医 石村武志

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