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レントゲン

泌尿器科クリニックで行うレントゲン検査の代表的なものとしては、「胸部レントゲン」と「腹部レントゲン」の2種類があります。「腹部レントゲン」のなかでも泌尿器科で尿路結石の診断には「KUB」という検査を行います。

 

① 胸部レントゲン

検診や人間ドックなどで、胸部レントゲンを撮影された経験のある方が多いかと思います。ほとんどの方は、「異常なし」と判定されるでしょうが、なかには「異常陰影あり」と判定され病院で精密検査を受けることもあるかと思います。胸部レントゲンはどんな検査なのでしょう。そして何を調べているのでしょう。

レントゲン検査は身体にX線を当ててその影を見て病気を判断する検査だということは聞いたことがあると思います。我々が普段浴びている太陽の光が、1. 物に当たると影ができます。2. 半透明なものに当たると薄い影ができます。3. 透明なものに当たるとほとんど影ができません。

レントゲン検査も同じです。X線を胸部に当てた時に、1. 密度の濃い骨などに当たると影ができます。2. まあまあ密度の濃い心臓などに当たると薄い影ができます。2. 空気を含んで密度の薄い肺に当たるとほとんど影ができません。

目で見ても外側しか見えない人体の内部に何か変化が起きていないかどうかを調べるのがレントゲン検査なのです。たとえば本来ほとんど影ができない肺に「がん」ができると、周囲の肺に比べて密度の濃い「がん」の部分は白い影となり映るわけです。

 

胸部レントゲンでは主に、①肺に腫瘍や炎症がなどの病変がないかどうか、②肺の外側などに水分や空気が溜まっていないか、③心臓や血管が大きく拡張していないか、を調べます。胸部レントゲンの異常陰影はさまざまですが、異常と言われた際に疑われる病気としては具体的に、肺がん、肺炎・肺結核(あるいはそれらの治癒後)、気胸、胸水、心不全などがあります。

胸部レントゲンは、X線の照射量つまり被曝の量が少ない検査で、異常がありそうな人となさそうな人をおおまかに分ける検診などには非常に役に立つ検査です。ただし、「異常がある可能性がある」ということはわかりますが、細かいことまでわかる検査ではありません。もしも、胸部レントゲンで異常を認めた場合、例えば「CT検査」、「心臓超音波検査」、「採血検査」など他の検査も行いながら診断を進めることになります。

 

② KUB(ケーユービー)

胸部レントゲンは、心臓や肺など、内科で担当する病気を診断するために行われるレントゲン検査です。もちろん、レントゲン検査は他の臓器の診断にも使われます。例えば骨折が疑われた際に整形外科ではその部位の骨を撮影します。では泌尿器科でレントゲンが最も活躍するのはどんな時でしょうか。

そうです、痛みの王様「尿管結石」を含む「尿路結石」の診断のために、腹部レントゲンを撮影する時です。特に泌尿器科で腹部レントゲンを撮影する時は、少しレントゲン機械の設定を変えて「尿管結石」の診断をしやすいようにしています。このようにして泌尿器科で撮影する「腹部レントゲン」を我々泌尿器科医は「KUB」(ケーユービー)と呼びます。Kidney(腎臓)、Ureter(尿管)、Bladder(膀胱)の頭文字を取って、「KUB」です。

痛みの王様「尿管結石」以外にも、実はあまり痛みのない「腎臓」にできる「腎結石」、膀胱にできた「膀胱結石」をまとめて「尿路結石」と呼び、これらの診断には「KUB」が役に立ちます。「尿路結石」はカルシウムを含んでいることが多く、骨と同じような白さで写ります。ただし、「KUB」にも弱点があり、以下のような場合は、診断に迷ってしまいます。

 

KUB(左腎結石)

 

①レ線陰性結石

「尿路結石」の全てがカルシウムを含んでいるわけではありません。例えば、マグネシウムが主成分の結石は、「KUB」ではあまりはっきりと白く写りません。また尿酸、シスチンなどを主成分とする結石は、「KUB」ではほとんど映りません。このように「KUB」で映らない「レ線陰性結石」が2〜3割はあると言われています。

 

② 尿路結石によく似た白い影

実は体内、特に腹部には、「KUB」を含むレントゲン検査で白く映る物体がたくさんあります。例えば、動脈硬化を起こした血管の壁、石灰化(石のように硬くなった)を起こしたリンパ節や軟骨、などです。

「急に腰が痛くなって血尿が出た」という場合に、「尿管結石」かもしれないと思って「KUB」を取ると、「尿管結石」のように見える白い影が4つも5つもある、ということはよくあります。もちろん、こんなにたくさんの「尿管結石」がいっぺんにできることは非常に稀です。

このような場合、写った白い影のほとんどは動脈硬化を起こした血管の壁など「偽物の尿管結石の影」なのです。「腎臓」「尿管」「膀胱」といった尿の通り道と外れた場所にあれば「にせもの」とわかります。また色の濃さや形などから判断して、熟練した泌尿器科医ならおよそ区別はつくことが多いです。

それでも非常に判断に迷うこともあり、上記の「レ線陰性結石」を疑う場合なども含め、「KUB」でわからない場合は「腹部CT」で確定診断をつけます。「腹部CT」を撮影すればほぼ100%「尿路結石」の診断はつきます。ただし、それなりに被曝量も多いため、まずは「KUB」を撮影してそれでわかればよいですし、微妙な場合はCTを撮影することが多いと思います。

 

「KUB」に写っている影は骨、結石だけかと思いがちですが、実は「腎臓」や、尿が溜まっていれば「膀胱」の影もうっすらと写ります。また、「腸腰筋」という背骨の横にある大きな筋肉も写っています。これが普通の腹部レントゲンとの違いなのです。これにより「腎臓」の腫瘍や「膀胱」に残っている尿の量を診断する補助にもなります。

 

泌尿器科専門医 石村武志

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