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腎細胞がん

尿を作る臓器である腎臓にできる癌が、腎細胞がんです。近年、健診や人間ドックのエコー検査やCT検査などにより、偶然見つかることが多くなっています。早期であれば、内視鏡やロボット手術で癌の部分のみを取り除く手術も可能です。

 

腎細胞癌とは

「腎臓」は、左右の腰のあたりにある握りこぶしくらいの大きさの臓器です。血液中の老廃物や余分な水分から尿を作って排泄する働きがあります。「腎臓」の中でも尿を作ることを担当する「実」の部分を「腎実質」、「腎実質」で作られた尿を溜めておくことを担当する部分を「腎盂」(じんう)といいます。

 

「腎細胞がん」は、「腎臓」のなかでも「腎実質」にできるがんで、「腎臓」にできるがんのうち90%を占めます。ちなみに「腎臓」のなかでも「腎盂」にできる癌は「腎盂がん」と言って、どちらかというと「膀胱がん」や「尿管がん」に似た性質があります。「腎がん」と呼ばれることもありますが、この場合、一般的に「腎盂がん」は含みません。

 

腎盂尿管がんはこちら

 

「腎細胞がん」は、最近増えてきており、泌尿器科系がんの中では、前立腺がん、膀胱がんに次いで3番目に多いがんです。他の泌尿器科系がんと同じように男性に多く、女性の約2倍程度と言われています。年齢としては40歳以上の方に多く発生しますが、ごくまれに20歳代で「腎細胞がん」になる方もいます。喫煙者は、非喫煙者にくらべて2倍程度「腎細胞がん」になりやすいと言われています。

 

「腎細胞がん」は、早期のうちはほとんど症状がないため、昔は相当に進行して大きくなった状態で、「血尿」や「貧血」、「腹痛」が出て、あるいは骨や肺などに転移をした結果、「骨折」や「咳」などがきっかけとなり見つかることがほとんどでした。しかし、最近では健康診断や人間ドックなどで「腹部超音波」(エコー)や「CT検査」がよく行われるほか、他の病気で診察を受ける際に、同じく「腹部超音波」(エコー)や「CT検査」を行うことも増えました。その結果、これらの検査を行った際に、全く無症状で早期の「腎細胞がん」が、偶然見つかることが増えています。

 

上記のように「腹部超音波」(エコー)や「CT検査」で偶然見つかった場合、それが「腎細胞がん」であると確定診断するために、造影剤を注射して撮影を行う「造影CT検査」や、「MRI検査」を行います。「腎細胞がん」でほぼ間違いないと判断した場合は、「骨シンチ」や「PET」などを行い、全身の臓器に転移がないかどうかを確認します。

 

「腎細胞がん」と診断されて、なおかつ転移がなくがんが腎臓にとどまっている場合は、根治手術が可能です。がんの大きさや場所などにより、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術のいずれかで、全摘除術(片方の腎臓ごと摘出する)か部分切除術(がんの部分のみをくり抜いて切除して腎臓は温存する)を行います。最近では腹腔鏡もしくはロボット支援手術で行われることが多く、また部分切除術が行われる機会が増えています。このようにして手術をおこなった「腎細胞がん」の生存率は90%を超えると言われています。

 

もしも、「腎細胞がん」と診断された時点で、肺や骨、リンパ節などに転移を認めた場合は、「薬物治療」を中心とした治療を行います。ただし、他の臓器のがんと違い「腎細胞がん」は、転移を認めた場合でも手術で「腎臓」を摘出してから「薬物治療」を行うことが多いです。その方が手術をしないよりも長生きできることが多いからです。

 

「腎細胞がん」には、いわゆる「抗癌剤」はほとんど効かないと言われており、従来「サイトカイン療法」という治療がが行われてきました。その効果は限定的でしたが、近年「分子標的薬」と「免疫チェックポイント阻害薬」がそれぞれ何種類も開発されて、続々と市販されております。これらの新しい薬によって、転移性腎細胞がんの生存率は改善しつつあり、また今後もさらによくなることが期待されます。

 

腎細胞癌の症状

「腎細胞がん」は、「腎臓」のなかでも「腎実質」にできるがんで、痛みなどの初期症状はほとんどありません。また、「腎臓」は背骨の横あたりと体の奥の方にあるため、「腎細胞がん」ができると、気づかない間に大きくなっていきます。昔は、いつのまにか進行した「腎細胞がん」が、おなかの上から触ってわかるほど大きくなってから気づいたり、背中やおなかの横の方が痛くなったり、血尿が出たりすることで、初めてわかることがほとんどでした。また大きくなったがんのせいで熱が出たり、体重が急に減ったり、貧血になったりすることなどもよくありました。

 

また、「腎細胞がん」は進行するともちろん大きくなっていきますが、それと同時に、肺、骨、肝、リンパ節などに「転移」します。転移したそれぞれの臓器で大きくなることで、咳、骨の痛み、骨折、足のむくみなどが出て、それがきっかけとなって「腎細胞がん」と診断されることもありました。

 

このように昔は「腎細胞がん」といえばかなり進行してから見つかるため、治療をしても完全に直すことが難しいがんのひとつでした。しかし、この20年ほどで「腎細胞がん」は大きく変わり、治る確率がかなり高いがんになりました。手術の技術や治療薬などが大きく進歩したことも理由のひとつではありますが、もっとも大きな理由は、早期のうちに偶然見つかることが圧倒的に多くなったからです。

 

「腎細胞がん」の好発年齢である40歳以上になると、多くの方が健康診断や人間ドックで腹部超音波(エコー)や腹部CTなどの検査を受けます。また、このくらいの年齢になると、何らかの病気で病院で診察を受けることも多く、その際に腹部超音波(エコー)検査や腹部CTを受ける機会も増えます。「腎細胞がん」は腹部超音波(エコー)検査や腹部CTで比較的わかりやすいと言われており、以前では到底見つからなかった小さな「腎細胞がん」が見つかることが多くなったというわけです。ここ最近、新しく見つかる「腎細胞がん」のうち80%近くがこのように偶然発見されたものとされており、そのうち70%以上が腎臓に限局した早期がんだった言われています。

 

腎細胞がんの検査、診断

「腎細胞がん」の診断には、「尿検査」、「血液検査」、「腹部超音波」(エコー)、「腹部造影CT」、「生検」「MRI」、「骨シンチ」、「PET」などが行われます。

 

「尿検査」は泌尿器科の基本検査です。「腎細胞がん」の診断を進める中では、例えばがんが「腎盂」に浸潤した結果、「血尿」がないかどうかなどを確認します。また「腎細胞がん」が原因で「貧血」や「腎不全」になっていないかなどを「血液検査」で調べます。「血液検査」によって「腎臓」の働きが低下しているか、などもわかります。これは、その後の手術などの治療方針を決める判断材料になります。「腎臓」の働きが低下している方の場合、できるだけ「腎細胞がん」の部分だけをくり抜いて摘出する「腎部分切除術」を選択することで、腎臓の機能を温存するようにする、というわけです。

 

さきほどから、「腎細胞がん」は偶然見つかることが多い、と説明してきました。このような場合でも、泌尿器科を受診したら必ず「腹部超音波」(エコー)をもう一度行います。健診などで「腎細胞がん」の疑いがあると言われて受診された方でも、泌尿器科医があらためて自分の手で「腹部超音波」(エコー)をして、「腎細胞がん」の大きさや場所などを確認して、その後の手術などの治療方針を決めるために必要となるからです。

 

また、健診や人間ドックはあくまで「ふるいわけ検査」ですので、ちょっとでも疑わしい場合は「腎細胞がん疑い」となり、要精密検査とされます。このように受診された方のなかで、泌尿器科医が「腹部超音波」(エコー)を自分の手でやり直すと、確かに少し変わった形の腎臓だががんはどこにもない、ということも珍しくありません。

 

なお、多くの健診や人間ドックの「腹部CT」では、造影剤を注射せずに撮影されます。これを「腹部単純CT」と言いますが、「腹部単純CT」では「腎細胞がん」の可能性が高そうだ、というところまではわかるのですが、「ほぼ腎細胞がんでまちがいない」と診断するためには、「造影剤」を注射してから撮影する「腹部造影CT」が最も役に立ちます。「造影剤」を注射することで、正常な「腎実質」や、「腎細胞がん」は、白く染まって写ります。染まり具合の微妙な違いにより「ほぼ腎細胞がんでまちがいない」と判断できるようになります。

 

実は「腎細胞がん」とひとくくりに言っても、さらに細かく6種類に分けられます。種類によって進行の速さや効きやすい薬が違うなど、性質の違いがあります。同様に「腹部造影CT」での写り方にも種類によって違いがあり、「ほぼ腎細胞がんでまちがいない」と診断するのが難しい場合があります。このようなときはさらに「MRI」を撮影することもあります。ちなみに「ほぼ腎細胞がんでまちがいない」という言い方をしている理由は「腎細胞がん」と確定診断するには、実際に腫瘍の組織を顕微鏡で調べる「病理診断」が必要だからです。

 

多くの場合は、上記のような画像検査で「ほぼ腎細胞がんでまちがいない」と判断した時点で手術を行い、摘出した腫瘍の組織を顕微鏡で調べ「腎細胞がん」と確定します。ただし、非常に小さい場合は手術で摘出したけど良性腫瘍だった、ということもありますし、大きくても「腎細胞がん」かどうか判断に迷うことがあります。そのような場合は、「生検」を行い組織を採取して「病理診断」で最終判断をするということもあります。「生検」は、背中から細い針を刺して組織を一部採取する検査ですが、細胞が散らばりがんが広がる危険性もあるため、「腹部造影CT」で「ほぼ腎細胞がんでまちがいない」と判断した際には通常行いません。

 

「腎細胞がん」は進行するとやがて、肺、骨、肝、リンパ節などの臓器に「転移」します。「転移」がないかどうかを調べるために「骨シンチ」、「PET」が行われることがあります。「転移」があるかないか、どの臓器にどのくらいの大きさの「転移」があるかによって、薬物治療を含めた治療方針が変わります。

 

腎細胞がんの治療

「腎細胞がん」の治療は、進行度、体の状態や年齢、患者さま自身の希望などから、総合的に判断し決定します。その中で重要なのはやはり進行度、つまり、① 腎臓にあるがんの大きさと、② 転移があるかないか、です。

 

 腎細胞がんの治療①:リンパ節や他の臓器に転移がなく、腎臓のがんが小さい場合(4cm未満)

手術に耐えられるだけの体力があれば、基本的に手術で「腎細胞がん」を取り除くことで、完全に治る確率は95%以上あるため、できる限り手術をした方がよいでしょう。昔は小さな「腎細胞がん」に対しても「腎臓」ごと摘出することが多かったのですが、最近ではほとんどの場合、「腎臓」から「がん」の部分だけをくり抜いて切除する手術で、「腎臓」を温存できるようになっています。

 

このような「がん」の部分だけをくり抜いて切除する手術は、少し前まで「腹腔鏡下手術」という内視鏡で行われることが多かったのですが、最近ではさらにそれを進化させた「ロボット支援腹腔鏡下手術」で行われ流ようになってきました。いずれの手術でも、お腹に残るキズは1センチ以下のものが4〜5箇所と、がんの大きさに応じて数センチのものが1箇所で、体が受けるダメージは非常に小さいです。

 

また、「ロボット支援腹腔鏡下手術」は、非常に細かい操作が可能なため、がんをくり抜いてできた「腎臓」のキズを縫い合わせる時間がとても短くすむため、温存した腎臓の働きが十分に保たれるという利点があります。「ロボット支援腹腔鏡下手術」に使われるロボットは「DaVinci」という海外製のものが主流ですが、最近では神戸大学も開発にたずさわった日本初の国産手術用ロボット「hinotori」も使用されるようになっています。

 

手術を受ける体力がありそうにないと判断された場合や、どうしても手術を受けたくない、という方は、「経皮的凍結療法」や「ラジオ波焼灼術」などの治療があります。体の外から特殊な針をがんに直接刺し、凍らせたり、熱で焼いたりして「腎細胞がん」を治療する方法です。癌を完全に治しきる効果は手術の方が勝りますが、体への影響は少ない治療です。

 

また4cm未満の非常に小さな「腎細胞がん」の場合、何も治療をしないで様子を見る「監視療法」という選択肢もあります。「腎細胞がん」の中には非常に進行が遅く何年も大きくならず進行もしないものがあります。そこで、数ヶ月から半年おきなど定期的に「CT検査」や「MRI検査」、「超音波検査」(エコー)などの画像検査を行い、癌が大きくならないかどうかを監視しながら経過を見ていくわけです。

 

ただし、いくら小さくても進行速度が速いものもありますので、定期検査を行うなかで、大きくなってきてやはり手術などの治療が必要となることもありますし、次の定期検査までの間にいつのまにか他の臓器に転移してしまったりする可能性がないとは言いきれません。よって、「監視療法」も、90歳以上など非常に高齢であったり、手術を受ける体力がありそうにないと判断された場合や、どうしても手術を受けたくない、という方が選択するべきと考えます。


腎細胞がんの治療②: リンパ節や他の臓器に転移がなく、腎臓のがんがある程度以上の大きさの場合(4cm以上)

ある程度大きな「腎細胞がん」でも、基本的に手術で取り除くことにより、完全に治る確率は80%以上あるとされており、できる限り手術をした方がよいでしょう。7cm未満程度までは、やはり「腎臓」から「がん」の部分だけをくり抜いて切除する手術で「腎臓」を温存できることが多いです。7cm以上の場合、がんのある場所によっては「腎臓」を温存できることもありますが、がんを取り残すことなく手術を行うためには、「腎臓」ごと摘出することになることが多いです。

 

「腎臓」ごと摘出する手術は「腹腔鏡」で行われることが多いです。「がん」の部分だけをくり抜いて切除する手術は、開腹手術で行われたり「腹腔鏡」で行われたりもしますが、やはり「DaVinci」、「hinotori」などの手術用ロボットを用いた「ロボット支援」手術で行われる機会が増えています。

 

腎細胞がんの治療③: 他の臓器に転移はないが、リンパ節に転移がある場合や腎臓のがんが周囲の臓器に浸潤している場合

「腎細胞がん」のリンパ節転移は通常まず腎臓に一番近い血管の周囲に出てきます。この場合、手術で「腎臓」と一緒に転移のある「リンパ節」を取り除きます。また周囲の臓器に「腎細胞がん」が浸潤(隣り合った臓器に直接食い込むように大きくなること)している場合は、浸潤した相手がたの臓器(多くの場合、肝臓、腸、膵臓、筋肉など)の一部を「腎臓」と一緒に取り除きます。

 

このように、比較的進行した「腎細胞がん」の手術は、「開腹手術」で行うことが多いですが、中には「腹腔鏡」でできる場合もあります。いずれにしても、手術だけで「腎細胞がん」を完全に治すことが難しくなってくるので、さまざまな「薬物療法」を手術の前、あるいは手術が終わった後に行うことが多いです。

 

腎細胞がんの治療④: 肺、肝臓、骨、脳、皮膚など、他の臓器に転移がある場合

「腎細胞がん」が他の臓器に転移している場合、通常は「腎臓」にある癌と、転移した臓器にできたがんを、全て手術で取り除くのは困難なため、「薬物療法」が中心となります。この考え方は胃がん、大腸がんなど他のがん種と共通のものです。ただし「腎細胞がん」には他のがん種にはない大きな特徴があります。それは、他の臓器に転移している場合でも、「腎臓」にあるがんを手術で摘出してから「薬物療法」を行なった方が、長生きできる、というものです。よって、「腎細胞がん」はいかなる進行度で見つかったとしても、その治療に手術が組み込まれることが多くなります。

 

とはいえ、「腎細胞がん」が他の臓器に転移している場合の治療の中心は「薬物療法」、つまり飲み薬や点滴となります。「腎細胞がん」を治療するための飲み薬や点滴は、最近とてもたくさんの種類が開発されて、治療に使われるようになってきました。ちなみに「腎細胞がん」が「肺」に転移していたとしても、それは「肺がん」ではなくあくまで「腎細胞がんの肺転移」ですので、治療薬を選ぶ場合は、腎細胞がんの性質に合わせて決めることになります。

 

さて、手術の方法を選ぶ際には、「腎細胞がん」の大きさや進行度を参考にして決めました。しかし、たくさんある飲み薬や点滴の中からどれを使うかは、「腎細胞がん」の「組織型」を中心に決めることになります。実は「腎細胞がん」の中にも、色々がタイプがあり、さらに細かく6種類に分けられます。先ほど説明した通り、転移があってもまずは手術で「腎臓」ごとがんを摘出するところから治療が始まることが多いため、摘出した「腎臓」を顕微鏡を使って検査して、どのタイプの「腎細胞がん」かを調べます。

 

また。それぞれの薬には割と色々な副作用があり、その程度も薬によって違います。よって、「組織型」に加えて、その方の持病や体力、年齢、転移した部分の癌の大きさや数などから、その方にとって一番有効と思われる薬から使用します。そして、もしもその薬の効果が鈍ってきた場合は次の薬を使い、また効果が鈍ってきたらまた別の薬を使う、などのように、続けて薬を使って治療することで、「転移性腎細胞がん」は完全に治ることは難しくても、がんとともに生きていくようなスタイルで、昔に比べるとかなり長生きできるようになってきました。たくさんある種類の薬は以下の通りです。

 

① サイトカイン療法
② 分子標的薬
③ 免疫チェックポイント阻害薬

 

泌尿器科専門医 石村武志

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