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前立腺がん

前立腺がんは、中高年男性の間で増加しており男性では罹患率が第1位のがんです。しかし、その進行は比較的緩やかなことも多く、手術、放射線、ホルモン剤など有効な治療を、進行度や悪性度、年齢、ライフスタイルによって選びます。早期のうちは症状に乏しいため、検診や人間ドックなどの採血でPSAを調べることが重要です。

目次

 

前立腺がんとは

「前立腺」は男性にしかない臓器でクルミのような形をしていています。「前立腺」は、「尿道」の一番奥、つまり「膀胱」の出口部分で「尿道」を取り囲むように存在し、精子に栄養を与える前立腺液を作っています。この「前立腺」にできるがんが「前立腺がん」です。

 

 

歳をとると誰でも多少は「前立腺」が大きくなりますが、これは「前立腺肥大症」といって、「前立腺癌がん」とは全く別の病気です。「前立腺肥大症」は良性の病気で、加齢現象の一種とも言えます。「排尿困難」、「尿勢低下」「夜間頻尿」などの症状で泌尿器科を受診される高齢男性の多くは「前立腺肥大症」と診断されます。

 

前立腺肥大症についてはこちら

 

「前立腺がん」も「前立腺肥大症」と同年代の高齢男性に多い病気ですが、よほど進行しない限りは「前立腺がん」自体により「排尿困難」、「尿勢低下」、「夜間頻尿」などの症状はあまり出ません。ではどうやって見つかるのかというと、最近よく行われるようになった「PSA検診」がきっかけになることがほとんどです

 

 

「PSA検診」は、市町村や職場で行われる検診での採血検査の1つです。「PSA」の数値が高ければ「前立腺がん」の可能性があります。ただし、この時点ではあくまで「可能性がある」だけで、「PSA検診」で「PSAが高い」とわ言われた方でも、「前立腺がん」が見つからないことのほうが割合的には多いです。

 

 

それでも、「 PSA検診」で、「PSAが高い」と言われた人が精密検査を受けると、一部の方に実際「前立腺がん」が見つかります。

 

 

「前立腺がん」は、もともとは欧米人に多い癌でしたが、近年の食生活の欧米化などにより、日本でもこの20年ほどで約10倍程度に増加しています。2017年には男性の癌の中で胃癌や大腸癌を抜いて罹患数が第1位となり、今後も増え続けると言われています。

 

いっぽう、前立腺がんが原因で亡くなられた方の人数は、がんで亡くなられた方全体の中では、第6位とそこまで順位は高くありません。このことからも前立腺がんは早期発見をして適切な治療を行うことで、十分に治ることが期待できるということです。

 

 

早期の「前立腺がん」の治療には、飲み薬、注射、手術、放射線治療、などさまざまな種類があります。比較的ゆっくり進行する特徴があるうえに、これらの治療がいずれもよく効きます。また比較的進んだ状態で見つかっても飲み薬、注射などの治療を組み合わせることにより、進行を抑えることができます

 

前立腺癌がんの症状

 

排尿に関する症状

「前立腺がん」は、初期のうち、つまりがんが「前立腺」にとどまっており大きさもそれほど大きくない時期には、症状がほとんど出ないことが多いです。

 

仮に早期の「前立腺がん」が見つかった方に、「頻尿」、「排尿困難」、「残尿感」などの排尿に関する症状があったとします。そんな時でも、それらの症状は同じく中高年男性に多い良性の病気である、「前立腺肥大症」によるもののことが多いです。

 

 

「前立腺がん」でこのような排尿に関する症状が出る方もいますが、その場合は「前立腺がん」は前立腺の中でかなり進行して大きくなっている可能性があります。

 

PSA検診

では「前立腺がん」をどうやって早期に発見できるのでしょうか? それは「PSA検診」を受けることです。「PSA検診」とは、住民検診などで行われる「採血検査」で、「PSA」という検査項目を調べることです。

 

PSA

 

「PSA」の数値が高いと「前立腺がん」を疑いますが、かといって必ず「前立腺がん」というわけではありません。もちろん、数値が高いほど「前立腺がん」である可能性は高くなります。また数値が高いほど、仮に「前立腺がん」だった場合にはより進行している可能性があるということになります。

 

「PSA」は市町村や職場などの検診、人間ドックの検査の一部として調べられることが多いですが、その他にも「前立腺肥大症」、「糖尿病」、「高血圧」などの他の泌尿器科の病気や生活習慣病について治療を受けている方が、かかりつけ医で調べてくれることもあります。このようなきっかけで、早期の「前立腺がん」が見つかることが増えています。

 

 

転移がある場合

「前立腺がん」は最初はもちろん「前立腺」に発生しますが、進行すると骨やリンパ節に転移をします。最近ではそのように進行した状態で見つかることは減ってきてはいますが、それでも新しく発見された「前立腺がん」の患者さまのうち、約1割程度が初診時に転移があるといわれています。

 

仮に骨に転移があった場合はその部分の痛みが出ます。腰痛が原因で整形外科を受診して、調べてみると「前立腺がん」が見つかった、ということは割とよくあります。

 

 

またリンパ節に転移があった場合は、足の浮腫(むくみ)などが出ることもあります。高齢の男性で、左右どちらかの足だけにむくみが出るような場合は、「前立腺がん」のリンパ節転移の可能性を考える必要があります。

 

前立腺がんの診断

PSA

「前立腺がん」の診断のために行う検査としてまず最初に行うのは、うえでも説明した通り、「採血検査」で「PSA」を調べることです。住民検診や人間ドックの採血検査で「PSA検診」を行い、異常値を言われて泌尿器科を受診される方はたくさんいらっしゃいます。少なくとも60歳以上、できれば50歳以上の方は全員、PSAを1年に1度は調べておくことをお勧めします

 

 

さて、「PSA」は日本語に訳すると「前立腺特異抗原」と呼ばれ、もともと前立腺から血液中に少量出ている物質です。「前立腺がん」になると数値が上がることは説明した通りです。ただし、「PSA」は決して「がん細胞だけが出している物質」ではないので、健康な方でも「PSA」の値はゼロではありません。

 

良性の病気である「前立腺肥大症」で「前立腺」が大きくなることでも「PSA」は少し上昇します。また、「慢性前立腺炎」などで前立腺に炎症があっても「PSA」は上昇します。つまり「PSA」の数値が高いからといって必ず「前立腺がん」というわけではなく、数値が高いほど「前立腺がん」である可能性が高くなり、また「前立腺がん」だった場合に、より進行している可能性があるということになります。

 

 

一般的に「PSA」が4.0以上の場合は異常値とされており、PSAが4.0〜10.0の方で10人のうち3人程度、PSAが20以上の方で10人のうち半分以上に「前立腺がん」が見つかるといわれています。逆にいうと「PSA」が4〜10程度で異常値だったからといって、10人のうち7人程度は「前立腺がん」ではないということになります。

 

では、「PSA」が4.0以上で「前立腺がん」を疑われた場合、どのようにして本当に「前立腺がん」なのかどうでないのかを調べるのでしょうか。

 

まずは、診察時に「直腸診」や「超音波検査」(エコー)で、「前立腺」の形や硬さなどを調べます。

 

直腸診、超音波検査

「直腸診」は肛門から指を入れて行う検査のためやや不快感がありますが、そこまで痛みを伴うわけではありません。必ずしも最初の診察時に行わないと診断ができない、というわけではないので、どうしても拒否感のある方には行いません。相談してください。さて本来、前立腺は消しゴムのような弾力がある硬さをしています。ところが「前立腺がん」があると、その部分が「石」のように硬くなります。これにより「前立腺がん」の疑いがますます高そうか、そうでないかを区別します。

 

 

「超音波検査」(エコー)のやり方には、お腹にプローべをあてて行う「経腹的超音波検査」と、肛門に棒状のプローべを入れて行う「経直腸的超音波検査」があります。後者の方がやや鮮明な画像が得られますが、かといって次に説明する「MRI検査」に勝るものでもなく、苦痛を伴うので、通常の診察時には「経腹的超音波検査」を行うことが多いでしょう。なお、「前立腺がん」があると、通常の前立腺組織よりも少し黒っぽい影として写ります。

 

 

MRI検査

次に「MRI検査」を行います。「MRI検査」は磁気を利用して「前立腺」の内部にがんを疑う所見があるかどうかを調べる検査です。数分〜数十分間、大きな音がする機械の内部で寝ておく必要があるので、狭い場所が苦手な方以外は特に苦痛を伴う検査ではありません。最近では一昔前と比べると、MRIの検査性能が飛躍的に向上しています。「前立腺がん」が実際にあるかないかを区別するのに、かなり有効な検査です。

 

 

「PSA」、「直腸診」、「腹部超音波」、「MRI」の順番で検査を進めることが多いですが、これらの検査の結果から、「前立腺がん」の疑いが相当高い、と判断しても、まだ断定することはできません。「前立腺がん」の確定診断のためには、以下で説明する「前立腺生検」という検査を行います

 

前立腺生検

「前立腺生検」は、「経直腸的超音波検査」で用いる棒状のプローべを入れて行います。「前立腺」の組織を、専用の細い針を使って採取する検査です。麻酔をせずに検査を行うと痛いので、通常は数日入院して局所麻酔をして検査を行います

 

 

この検査で採取した「前立腺」の組織を顕微鏡で詳しく調べて、がん細胞を認めた場合は、「前立腺がん」が最終確定します。また、「前立腺がん」の有無だけでなく、「悪性度」もわかります。つまり、あまり進行が早くない「悪性度の低い前立腺がん」か、「中くらいの前立腺がん」か、「悪性度が高くて進行が早い前立腺がん」かがわかります。

 

CT検査、骨シンチ

「前立腺生検」で「前立腺がん」と診断された場合は、がんの進行度を調べるための検査を行います。がんの進行度を調べる検査として、「CT検査」、「骨シンチ」などがあります。いずれも画像検査のため、検査薬の注射などは行いますが、検査台のうえに寝るだけで終わる検査ですので、大きな苦痛は伴いません。

 

「PSA」の数値、「直腸診」、「超音波検査」、「MRI」を行った段階で、「前立腺がん」の可能性が低そうであると判断することもあります。また、「前立腺生検」まで行なったが「前立腺がん」ではなかった、となることもあります。いずれの場合でも、その後は定期的に「PSA」を調べます。さらに上昇すれば、その段階でもう一度「前立腺生検」を行うこともあります。

 

前立腺癌の治療

前立腺がんは、進行度や悪性度に合わせてさまざまな治療があります。前立腺がんの状況、年齢や身体の状態に最適な治療を行うことで、十分に根治が期待できるか、根治しなくても癌とともに元気に長期間生存することが可能です。

 

①監視療法

非常に早期でかつ悪性度の低い前立腺がん患者さんで取り得る選択肢です。すなわち、がんが見つかってもすぐに治療は行わず、数ヶ月ごとにPSA検査で進行する気配がないかどうかを定期的に確認していく方法です。

 

 

非常に早期に発見される「前立腺がん」の中には、気がつかなければそのまま寿命を迎えて別の病気で亡くなっていた、というような 「寿命に影響しない前立腺がん」も含まれています。その証拠として、がん以外の病気で亡くなった男性を解剖すると、70歳以上の方で20%、80歳以上の方で30%くらいに前立腺がんが見つかると古くから言われています。

 

PSA検査の普及により、非常に早期で悪性度が低い前立腺癌でも発見されることが増えてきたため、この「監視療法」が考えられました。

 

「あまり悪くない前立腺がん」と、やはり治療をしなければ生命に関わってくるような「本当に悪い前立腺がん」を完全に区別することは難しいことです。しかし、PSAの値や前立腺生検の結果などからから、「あまり悪くない前立腺がん」の可能性が高そうであると慎重に判断すれば、「監視療法」を選択できるとされています。

 

もちろん、「あまり悪くない前立腺がん」の可能性が高そうと判断されてても、実際はそうでない可能性もあります。あくまでその可能性がかなり高そうということしかわかりません。なので、非常に早期でかつ悪性度の低い前立腺がんの場合でも、手術療法や放射線治療などを希望されるのであれば、それはそれで正しい選択と言えます。

 

実際は「あまり悪くない前立腺癌がんではない」可能性もあるとなると、この選択をしにくくなってしまいます。そこで、この方法を選んだ場合は必ず定期検診を行います。そして、もしも癌が進行しそうな気配があればそのタイミングで遅れることなく手術などの治療を行います。具体的には3ヶ月ごとのPSA、1年ごとの前立腺生検を行います。また最近ではMRIを検診に含めることがあり、これにより、今後は前立腺生検は行わずに済むようになるかもしれません。

 

もしも前立腺がんがやや進行してきた可能性がある場合は、手術や放射線治療を行うことで根治可能です。もちろん、なかには結局進行する気配がなく、そのまま元気に過ごされ寿命を全うする方もいらっしゃいます。


②手術療法(根治的前立腺全摘除術)

手術療法は、前立腺がんが転移をしていなくて、なおかつ前立腺局所では前立腺の「被膜」という「殻」の外まで浸潤していない場合に、根治(がんを完全に治すこと)を目的として行われます。また「被膜」へ浸潤が疑われる場合でも手術で治すことができることもあります。

 

 

手術の際に前立腺を直接見ても、前立腺のどの部分にがんがあるというのはわかるわけではないので、「根治的前立腺全摘除術」という手術の名前の通り、がんがある部位を含めて前立腺を全て手術で取り除きます。

 

前立腺は体内で、「膀胱」と「尿道」の間(正確には前立腺の内部にも尿道が通っています)あります。前立腺を取ると「膀胱」と「尿道」の間で尿の通り道が離れ離れになります。ちょうどだるま落としで一段抜いたようなイメージです。そこで、前立腺を取ったあとは、離れ離れになった「膀胱」の出口と「尿道」の入口を縫い合わせます。

 

 

「根治的前立腺全摘除術」は、「開腹手術」で行う場合と、「ロボット手術」で行う場合があります。「開腹手術」は従来通りお腹を切って行う手術です。「ロボット手術」とは腹部に小さな穴を開けて、その穴からロボットの手に装着してある内視鏡や手術器具をお腹に入れて、それらを医師が操作することで行う手術です。

 

 

2つの手術ともに、①「前立腺」を取って、②「膀胱」と「尿道」を縫い合わせる、と行うこと自体は同じです。しかし「ロボット手術」の方が圧倒的に詳細な観察や繊細な操作を行うことができるため、手術時の出血が非常に少なく、また「根治的前立腺全摘除術」特有の後遺症である「尿失禁」と「勃起障害」を減らすことができるため、この10年で急速に普及し、最近ではほとんどが「ロボット手術」で行われています


③放射線治療

1)外照射療法

放射線を身体の外部から前立腺にめがけて照射する方法です。最近ではコンピューターを用いて前立腺の形に沿って放射線を当てる「強度変調放射線治療」(IMRT)が主流になっており、治療効果が上がっただけでなく副作用は減っています。

 

 

「放射線外照射療法」は入院が不要で外来通移転で行うことができます。一方、一般的に1日1回、週5回の照射を合計40回弱行うため、全て終わるのに7~8週間程度かかります。

 

「放射線外照射療法」は、手術療法のような尿失禁はありませんが、「勃起障害」は起こります。また放射線が「直腸」や「膀胱」などの周囲臓器にもわずかに当たることで、「頻尿」、「血尿」、「血便」、「下痢」など副作用が出ることがあります。このような副作用は、強度変調放射線治療(IMRT)では比較的軽いとされます。

 

また、PSAが比較的高かったり、MRI等の画像検査で前立腺の「殻」であるの「被膜」にがんが浸潤している可能性がある場合などの、「高リスク」の前立腺がん患者さんに対してホルモン療法と併用することで根治が期待できます。

 

2)小線源治療(ブラキセラピー)

「小線源治療」は、「シード」と呼ばれる5mm程度の小さな粒を、等間隔でいくつも前立腺に埋め込む治療です。「シード」から低線量の放射線が出ることで、比較的早期で悪性度の低い「前立腺癌」を治療する放射線治療の一種です。

 

数日間の入院をし下半身麻酔をしたうえで「シード」を埋め込む処置をします。「小線源治療」は体力への負担が少ない治療です。その反面、数年後に血尿・血便といった晩期障害が起こる可能性があります。前立腺のサイズが大きい患者さんに対しては術前にホルモン療法を行い前立腺が小さくなってから治療を行う場合があります。

 

3)粒子線治療(重粒子線治療、陽子線治療)

「粒子線治療」には、「重粒子線治療」と「陽子線治療があり、いずれも2018年から保険適応となっています。いずれも放射線の一種ですが、体の深い部分だけに放射線が届くため、治療効果を出したい前立腺で放射線が出る性質があります。いっぽう直腸や膀胱、皮膚など、周囲の組織に不要に放射線が当たることを減らせるため、効率よく治療ができるという特徴があります。

 

重粒子線、陽子線ともに、癌を治す力は、「強度変調放射線治療」(IMRT)と同程度とされています。重粒子線は2〜3週間の入院で実際の照射は1日1回、週4回で合計12回、陽子線は1日1回、週5回で合計40回弱行うため7~8週間程度かかりるとわれています。

 

④ 薬物治療

薬物療法が選択されるのは主に転移のある前立腺がんの患者さまです。また、非常に高齢の患者さまや、体力的に根治療法が受けられない患者さまでは、転移のない前立腺がんであっても薬物療法が選ばれます。それ以外にも、根治的手術後の再発や、放射線治療と組み合わせて行われるなど、前立腺がんの薬物療法はさまざまな状況で役に立ちます。

 

 

少し以前までは、前立腺がんの薬物療法といえば、ほぼイコール「ホルモン療法」のことでした。「ホルモン療法」は副作用も少なく、また効果も高いことから非常に良い治療なのです。ところが、人によっては数年すると効果が鈍ってくることが問題でした。

 

最近では、ホルモン療法自体もいろいろな新しい種類の薬が増えたほか、抗がん剤やPARP阻害薬という全く新しいタイプの薬も出てきています。男性のなかで最も多いがんなので、治療の発展が目覚ましいのはとてもよいことでしょう。

 

前立腺がんは男性ホルモンによって増殖します。前立腺自体がもともと精液の一部を作る臓器なのですから、なんとなくイメージは湧きますよね。そこで、この男性ホルモンを抑えることで、前立腺がんをしぼませてしまおうというのが「ホルモン療法」です。

 

男性ホルモンは、そのほとんどが「精巣」で作られます。そこで、手術で両方の精巣を摘出すると、男性ホルモンがほとんどなくなり前立腺がんはしぼみます。ちなみに両方の精巣を取ることを「去勢」といいます。昔は転移のある前立腺がんに対する治療といえば「去勢」だったのです。

 

現在では、手術で精巣を取らなくても、「両側精巣摘除」とほぼ同じように、「精巣」が男性ホルモンを出さないようにさせる注射があります。前立腺がんの「ホルモン療法」でまず最初に使われるのが、この「精巣が男性ホルモンを出さないようにさせる注射」つまり「去勢注射」です

 

 

また「精巣」が出す男性ホルモンの効果をブロックする薬もあります。このような薬を「抗男性ホルモン薬」といいますが、これは飲み薬です。

 

「去勢注射」、「抗男性ホルモン薬」ともに、単独で使ってもある程度前立腺がんは抑えられます。しかし、多くの場合この注射と飲み薬は同時に使われます

 

なぜかというと、「去勢注射」を打っていても、「精巣」ではなく「副腎から出てくるわずかな男性ホルモン」があるからです。「抗男性ホルモン薬」で、この「副腎から出てくるわずかな男性ホルモン」を効かなくすることで、もっと効率的に前立腺がんを抑え込むことができます。

 

この2つの組み合わせによる治療で、転移がある前立腺癌があっても、5年も10年も元気にされている方がいらっしゃいます。いっぽうで、残念ながらホルモン療法は一部の方で段々と効果が鈍ってきます。なぜ効果が鈍るかというと、前立腺がんのがん細胞自体が男性ホルモンを出したり、ごくわずかな男性ホルモンでも増殖するように変化するからです。

 

これに対して、さらに強力に男性ホルモンを抑える新しい「抗男性ホルモン薬」や、男性ホルモンが作られる経路をブロックする薬など、たくさんの薬が出てきました。また同じくホルモン療法の効きめが鈍ってきた人に対して有効な抗がん剤も出てきました。他にも、骨転移巣に集まりその部分でのみ効果を発揮する「アルファ線」という放射線の一種を出すことで、転移巣の勢いを弱める注射などもあります。

 

またごく最近になり、「遺伝子の異常」で前立腺がんを含む悪性腫瘍ができやすい体質の方に限って、有効な「PARP阻害薬」という薬なども出てきました。この薬を使うためには、まず「遺伝的な異常」があることを調べる必要があります。もし異常があった場合は、「遺伝的な異常」なだけに、お子さまに検査をするかどうか、などのデリケートな問題もある治療ではあります。それでも治療選択が増えることは良いことですし、課題をクリアすれば今後のがん治療に大きな変革をもたらす可能性のある薬と言えるでしょう。

 

このように、前立腺がんの治療薬には、非常に多くの種類の薬があります。なかにはよく似た作用の薬もあるのですが、それぞれの方の健康状態、前立腺がんの性質によって、どの順番で治療を行うのが最善か、微妙に違うこともあります。間違いなく言えることは、一昔前は「ホルモン療法は良く効くがやがて効かなくなってしまう」と言われていたのが、「ホルモン療法は良く効くし、やがて効かなくなってもまた別の種類の薬が使える」という状況に変わってきているということです。


④ フォーカルセラピー( Focal therapy)

フォーカルセラピーは、高密度焦点超音波療法(HIFU)、凍結療法など、正常な前立腺組織を残した状態で、がんの部分のみを治療する方法です。限局性前立腺癌では治療選択の候補にあがります。

 

ただしこの治療はしっかり治ったかどうかの評価が難しく、治療効果があるかどうかの証拠が十分蓄積されていません。この治療を選ばれるとしたら、この治療の経験をしっかりと持った担当医とよく相談し、利点や欠点を十分理解したうえで選択する必要があると言えるでしょう。

 

泌尿器科専門医 石村武志

 

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